小さな声が聞こえるところ15「土いじりをもっとさせよう」

私たちの園には、小さな園庭があります。
私が幼稚園児だった頃、今の園舎が立つ前には祖父がこの場所で靴屋を営んでいました。
そしてお隣は風呂桶屋さん。昔ながらの職人さんが風呂桶を作る作業場がありました。

時が過ぎて、その職人さんだったおじいさんも亡くなり、残されて長く一人暮らしだったおばあさんも亡くなり、しばらく空き家になっていました。そして8年前の大地震で、古い空き家は倒壊しました。
更地になった場所を園庭として取得したのが園のお庭の始まりです。

昔勤めていた保育所の園庭に比べたら何分の一かの小さなお庭ですが、
小さな子どもたちにとって実は、お庭は広さや遊具よりも「自由に掘って遊べるか」ということが何よりも大事なんだなと痛感しています。

人間の子どもにとって「土いじり」はおそらく太古の昔から変わらぬ一番根源的な遊びなのではないでしょうか。
土を掘ったり、こねたり、泥にしたり、山を作ったり、トンネルを掘ったり。
水を流して、川を作ったり、池を作ったり、ドロドロの沼にしてみたり。
まさに天地創造!
健康な子どもであれば、何もなくても自由に遊べる土さえあれば時間を忘れて遊んでいるものです。
運動感覚、触覚、熱感覚、平衡感覚、、様々な感覚を躍動させて遊びに没頭しています。

一昔前は、お庭だけでなくあちこちに空き地や畑や田んぼの畦道など、気ままに土と戯れられる場所がありました。
しかし今はどこを見てもアスファルトで土に「蓋」がされています。
新築のお家は、草取りをしなくて済むようにでしょうか、アスファルトや砂利で地面を覆い隠してしまっているところが多いですね。
保育施設の整備された園庭でも、砂場以外のところは自由に掘ったりできないように整地されているところが多くて、なんだかもったいないなと思います。

幼児には整地されたグラウンドは必要なくて、凸凹になっているような「自然な地面」の上を歩いたり走ったりする方が平衡感覚を培うのにも大切なのです。

園のお庭にも砂場があるのですが、それ以外の場所でも自由に掘ってよいことになっています。
掘った場所を毎回お片づけのたびに「元どおり」にする必要もありません。
何日もかけて、クレーターのようにあちこちを掘り続けるとか、フルイにかけて極上の「サラサラ砂」を作り続けられるという「時間軸の広がり」の方が「面積的な広がり」よりも遊びにとっては重要なのです。
「さあ、今日も昨日の続きの穴を掘ろう!」と思えるのはなんと幸せなことでしょう。

宮城県美術館の名物学芸員だった齋正弘先生はかつて「こどもはカレースプーンが一本あれば、地面を掘り続ける!」とおっしゃっていましたが、これは本当。
幼児が固い地面を掘るには、カレースプーンが自在で一番適しています。
扱いやすい砂場の砂だけでは飽き足らなくなるとき、子どもたちは固い地面と格闘し始めるのです。
そうして地面の下から、かつて住んでいた住人の茶碗のかけらなど見つけようものなら宝探しのようですし、粘土層を発見すれば大騒ぎです。(実はこの東仙台から台原にかけての一帯は、古墳時代より良質な粘土が採れる地域として古来よりの窯跡が有名な地域です)

人は、大地に抱かれて命を繋いできました。
そして自然界とはたとえ都会の真ん中にいても、小さな地面と戯れることから繋がることができるのです。
現代を生きる子どもたちに、もっともっと「無限の土いじり」をさせてあげましょう。

 (この連載は、毎月新月・満月に更新されます。次回は3/21満月の更新です。)

文・虹乃 美稀子(園長/担任)

仙台市の保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事

06年 園の前身となるシュタイナー親子クラス開設
08年 「東仙台シュタイナー虹のこども園」開園 
仙台、東京、岩手にてシュタイナー講座を通年開催 

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