小さな声が聞こえるところ20「まねっこをして育つもの」

園での暮らしは、言わば子どもにとって家庭における理想の暮らしの再現です。
理想の暮らしとは、何でしょう。
人によって解釈は様々ではありますが、子どもにとって、ということで言えば、人間はその二本の手を使い生活に必要なものを生み出したり、繕ったり、働いたりすることができるということを実証していくことでしょう。つまり、暮らしに必要な家事を丁寧に行うことが、そのまま教育的なあり様になると言えます。

子どもの前で掃除をするときは、必ずほうきとちりとり、そして雑巾を使います。
園での日々の暮らしの「家事」はなるたけ、電気じかけでない昔ながらの生活道具を使うのです。
その方が、子どもにとってその仕事の意味が見え、まねがしやすいというのが理由です。
掃除機がどうしてゴミを吸い込んでいくのか、その電気じかけの仕組みは子どもには推し量れませんが、ほうきで集めたゴミをちりとりに寄せるという行為は、一目瞭然です。
これが、身体に基づく理解力となり、後の確かな思考力を育てます。

子どもは、「模倣」=まねっこをすることで育っていきます。
2歳くらいから、何でも大人や年上のきょうだいのまねをしたがりますが、面倒がらずに、触らせられるものは触らせたりしながら、一緒にやってみる雰囲気を楽しんでみましょう。

園ではお片づけの後、お集まりをする前に一度教室を簡単に掃除します。
その時に、ほうきとちりとりをかけるのは年長児の仕事なのですが、年少児はその様子を憧れをもって見つめています。そして、大人がちょっとしたことでほうきを手にしたりすると、さっと子ども用ほうきを取りに走り、年長児がやっていたように、小さな年少児もまた、注意深くほうきでゴミを集めようとしたりするのです。
本当の意味での自主性や意欲はこういった生活の何気ない場面で育まれていきます。
私たちにとって教育とは、こうした子どもの小さな意欲を見逃さずに、それを生かせるゆったりとしたリズムで暮らしを丁寧に培っていくことでもあるのです。

(この連載は、毎月新月・満月に更新されます。次回は6/3新月の更新です。)

文・虹乃 美稀子(園長/担任)

仙台市の保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事

06年 園の前身となるシュタイナー親子クラス開設
08年 「東仙台シュタイナー虹のこども園」開園 
仙台、東京、岩手にてシュタイナー講座を通年開催 

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