小さな声が聞こえるところ22「園庭は広い方が良いって本当?」

「子どもにはのびのびと広いところを走り回らせたい」
「幼稚園・保育園選びのポイントは、広い園庭があるかどうか」
そんな声をよく聞きます。
確かに、子どもが広いところをのびのびと駆け巡る姿は、大人が見ても気持ちよく、子どもの健全な心身の発達をイメージさせます。
でも、本当に「広い園庭」がそのまま子どもたちの健やかな成長を伸ばしてくれるものとは限らないかもしれません。
それは、どうしてでしょう。

時折、私の小さな園とは正反対のとても大きな園から転園してくる子がいます。
森のように広い園庭があったり、野山を駆け巡る保育が売りのはずなのに、なぜか予想していたようにはのびのびと遊びきれずに、園に行きたがらず、転園先を探してきたという方が多いのです。

私たちの園は、園庭は小さいものの、週に1度は近所の自然の残る公園にお散歩に行き、整地されていない斜面を駆け上がったり転がったり、小川に入ったりして遊んでいます。
月に1度は、広大な森に出かけて森の中の保育も行なっています。
園庭に、どこの園にもあるような遊具は一切置いていません。
手をかけた畑や花壇の世話をしたり、どこでも掘って良い地面があり、そこでひたすら時間をかけて泥遊びや砂団子作りに没頭するような遊び方をしています。

しかし、前述のような理由で転園してきた子どもは、最初のうちは一緒に公園に出かけても、森に出かけても、おっかなビックリで体が動きません。どう遊んで良いのか体が動かずに、「何をして良いのかわからない」と途方に暮れたりする子もいます。

実は私が20代の頃勤めていた保育所では、とても大きな園庭がありました。
また、学生時代に実習をした幼稚園は、仙台でも一等人気の広大な森を抱えたところでした。
そこで過ごす子どもたち、実は本当に「自然と触れ合っているか」というとそうではないことが多かったのです。
あまりにも広大すぎると、保育人数が多ければ多いほど、安全管理が厳しくなっていきます。広大な敷地であっても、いたるところに先生が立っていて「ここから先は行ってはいけません」と言わなくてはなりません。砂遊びを存分にする場所もありません。立派な制服が汚れるからです。
結果的に、子どもたちは広いところをただ闇雲に走ってストレスを発散し、設置された遊具で時間を潰すような遊び方にしかならないのでした。
その1ヶ月の教育実習中に、転勤で転園してきたばかりのお母さんに小声で相談されたことがあります。
「ここの幼稚園は、全然遊べないと子どもが訴えるのですが、実際どんな保育をしているのでしょうか」学生の私は、実習させてもらっている立場でもあり、正直なことが言えずに言葉に詰まった記憶があります。

大切なことがあります。
子どもというのは、広いところにただ放しておけば、のびのび遊ぶというものではないということです。本来、子どもは小さくて狭いところを本能的に好みます。それは、お母さんのお腹の中にいたような包まれた安心感を覚えますし、まだ自分自身という自意識が確立される以前の子どもは、その小さな体が把握できるサイズの場所でこそ、安心して冒険してみたくなるものだからです。

そして最も大切なことは、その子自身が周囲の大人にしっかり見守られ、自分という存在が認められているという安心感があってこそ、広い場所でも自分を見失わずにのびのび羽を広げられるということです。

最近、他の園に通っている保護者さんからも似たような相談を受けることがあるのですが、広い園庭や園舎があるのに、何だか我が子がのびのびできていないように感じられたら、もしかするとそういった大人の見守りの「覆い」をもっと必要としているのかもしれません。
子どもにとって何よりも大事なのは、物理的環境ではなく、人的環境であることを考えると、園選びで一番に着目しなくてはならないのは、立派な施設や環境条件ではなく、そこの先生たちが、本当に子どもたちのことを心から思って保育しているかどうかに尽きるということが言えるのだと思います。

(この連載は、毎月新月・満月に更新されます。次回は7/3新月の更新です。)

 文・虹乃 美稀子(園長/担任)

仙台市の保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、
シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事

06年 園の前身となるシュタイナー親子クラス開設
08年 「東仙台シュタイナー虹のこども園」開園 
仙台、東京、岩手にてシュタイナー講座、子育て講座などを通年開催 
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