新刊「いちばん大事な『子育て』の順番」発刊のご案内

小さな声が聞こえるところ34「気配を消して、幼児の世界にお邪魔する」

幼稚園部に入園されると「お母さんもシュタイナー幼稚園へ!」という体験プログラムがあります。
子どもたちが繰り返し体験している
毎日のライゲン(お遊戯的リズム遊び)、
毎週のにじみ絵、
季節ごとの人形劇などを、日々の保育の中にそっと参加して体験していただいてます。

「シュタイナー幼稚園、私が入りたかったです」
そんな声をお母さん方から(時にお父さんからも)聞くことがとても多いです。
多くの大人の正直な声でしょう。
そして園で大切にしていることを理解してもらうためには、
何よりもその空気感を味わっていただき、
体験を共有してもらうことがとても大事です。

保育に入ってもらう時に必ずお伝えしていることは
「気配をなるたけ消して、子どものひとりのような気持ちで教室にいてください」ということ。
子どもにとっては、たとえ顔見知りのお母さんであっても、
いつもはいない人がいる「お客さん」です。
お客さんの多いお家は、小さな子どもは落ち着きません。
なぜならお家の大人(園でいうなら教師)がお客さんに気を遣うことが増えると、
それだけで「いつものおうち」ではなくなるからです。
園はいつだって、子どもたちのための場所です。
ですから、保護者さんであろうと実習生であろうと見学の方であろうと、
いつもの子どもたちのお家の空気を壊さないように
「なるたけ自分の気配を消すように」していただくことをお願いしています。
つまり、積極的に話しかけたり、笑いかけたり、しないでくださいね、ということです。
それができない方は、そもそも教室にご案内するのが難しいのです。

こういった自分の言動に留意して身を整えるということ、
日常においてはなかなかない機会です。
心地よい緊張が生まれます。
そうした意味においてもこの体験プログラムは、お母さん方に新鮮な経験をもたらしているようです。

つい最近、にじみ絵体験に入られたあるお母さんのご感想を紹介します。

ー実際に自分も園の子どもたちと一緒に体験するプログラムは初めてでした。
 とても緊張していました。
 それは言うなれば、小人さんか妖精さんのお家に
 人間である私がこっそりお邪魔しているような、そんな感じで、
 ドキドキでも楽しみでもあり、神聖な緊張感が大きかったです。
 
 子どもたち一人一人が自信に満ち溢れている姿がとても印象的でした。
 
 準備から筆を握り、そして絵を描き、
 先生にできたことを告げ、お片づけをするその一連の動きが、
 しっかりと地に落ち着いているような、凛とした美しさがあり心に残りました
 
 とはいえ、筆を手にし、にじみ絵を始めると
 不思議なことに緊張感や頭で考えることは忘れ筆が動きました。
 大人だけの空間で同じことをしても、きっと
「何を描こうか」「どうやって描くのか」と頭で考えていたのではないか?と思います。
 6人の天使ちゃんたちと一つのテーブルに座って筆を手にしたことで、
 筆に魔法がかかったような不思議な体験でした。
 園での生活をこっそり覗けたとても素晴らしい体験でした。
 帰りの道中は、なんだか他の空間にいるような不思議な感じでした


園を出てからも、なんだか他の空間や次元に入ったような不思議な感覚が続く、
という感想はよくお聞きします。
この身体的な感覚そのものが、私たちが大切に守っている「幼児の世界」の感覚なのではないかと思います。
この空気感を把握できるようになると、理屈ではなく身体感覚で、
小さな子にふさわしい言葉や行動はどんなものかが自ずとわかるようになっていきます。

貴重な子育ての時間を大人自身も楽しい学びの時間として過ごしながら、
シュタイナー園ならではの経験を楽しんでいってくださればと願っています。

(この連載は毎月新月・満月の更新です。次回は12/26新月の更新です)


文・虹乃 美稀子(園長/担任)
仙台市の保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、
シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。
06年、園の前身となるシュタイナー親子クラス開設
08年、「東仙台シュタイナー虹のこども園」開園   
仙台・東京・岩手にてシュタイナー講座・子育て講座を通年開催 
new! 19年8月「小さなおうちの12ヶ月」(河北新報出版センター)出版 

Facebook|東仙台シュタイナー虹のこども園
Instagram|@steiner_nijinokodomoen

 

ABOUT

虹乃美稀子
虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。

2008年「東仙台シュタイナー虹のこども園」を開園。幼稚園部を中心に、未就園児親子クラスから小学生クラスまで、12年間にわたる子どもの成長を見守る草の根の教育機関として運営。
東京をはじめ、全国各地でシュタイナー講座・子育て講座を開催。

著書
「小さなおうちの12ヶ月」(河北新報出版センター)
「いちばん大事な子育ての順番」(青春出版社)