小さな声が聞こえるところ7「野生の味を知る」

実りの秋。
この季節になると、全国のご縁で繋がる方々から秋の実りがポツポツと届き始めます。阿蘇の山栗だったり、広島の柿だったり。
私が元来旅好きで、あちこちに友人知人を持ったということもありますが、一番には7年前の大震災での原発事故により、地元の野生のものを気軽に口に出来なくなったということが大きいきっかけです。
キノコなど、時間が経過して汚染数値が高くなるケースも見られます。
山菜にせよ、木の実などの実りにせよ、自然界の恵みが安心して享受できない状況を招いてしまったことは、子どもたちに対して大人の一人として責任を感じています。

さて、先日は岡山の方が柘榴を送ってくださいました。
パッカリと開いた口から、赤いルビーのように光る粒々はまるで宝石のよう。
山の中でこれを見たら、さぞ不思議な感覚を持つことでしょうね。
色々な連想がわき起こるのがわかる気がします。

子どもたちに食べてごらんといっても、初めて見る子がほとんどではじめのうちはおっかなびっくり。
でも一口食べると、「おいしい、、、」と言って、次の手、次の手と伸びていきます。「おいしい!」という感じではなく「おいしい?おいしい?おいしい、、、」と自分の中で確認していく感じです。
気に入った子は止まらなくなり、ちぎったかけらをお家に持っていき、きょうだいたちにも食べさせたいと大事にしまっていました。

調理されたもの、もしくは人間の味覚に合わせるように栽培されたものでは無い野生の味は淡白なものも多く、控えめな味が多いですね。
でも、その分、味覚を耳を澄ますように味わうので、感覚が育つように思います。

数日後に、今度は広島のアケビが届きました。
ある古墳の山の麓に誰にも知られずひっそり生っていたアケビたちだそうです。
一つずつ丁寧に新聞紙に包まれていました。アケビの実は種が多いですよね。(カエルの卵みたい!)
これは外で食べる方が似つかわしいと、外遊びの時間にひとり一つずつ渡して、種はこうやってペペペッと花壇に出すのよ〜と私が実演。

中には「種がいっぱいで食べるとこがちっちゃい」という子もいます。
(確かな指摘!)「そうね、種がいっぱいだから、いっぱい芽が出るかもしれないね」というとなんだかうれしそうになる子どもたち。
子どもたちにはいつでも、ポジティブで理に叶った返答をすることを心がけています。大人の答える世界観をそのまま全身で受け取る世代が、幼児期です。
最近は「種なし〇〇」と言った果物がよく見られますが、人間が食べやすいように種を無くすなんて、人間の奢り(傲慢)だなと思うのです。

園では、食育に力を入れていて給食もおやつも手作りを基本としていますが、それに加えてこうした「野生の味」に触れる機会も積極的に取り入れいています。
食べ、味わうことは、その対象との親密な会話の始まりです。
野生を食すことは、自然との対話の一つなのです。

(この連載は、毎月新月・満月に更新されます。次回は11/23満月の更新です。)

文・虹乃 美稀子(園長兼クラス担任)
仙台市保育士として7年間勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ
08年「虹のこども園」開園 
仙台、東京、岩手にてシュタイナー講座を通年開催 
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