小さな声が聞こえるところ84「生き方のシフトを考える」

満月の今日は日曜日。
いつもよりゆっくり、よろよろとベッドから起き上がってこれを書いています。
満月・新月更新と決めて始めたエッセイも、丸2年。
当日の朝に書くことも、今年は何度かありました。
今日も、そんな朝です。

昨日までに各クラス計9回のクリスマスのセレモニーを終えました。
すべて終わると、私も助手さんたちも、へとへとです。
一年を振り返ると、通う子どもの数が70名を超えた今年はなかなかハードな年でした。
通いたいというお子さんと親御さんはなるたけ迎えたいと努めてきたら、いつの間にかこんな数になってしまいました。
ここで迎える子どもたちは、一人一人かけがえのない縁を感じます。
だからこそ、できる限り受け入れたいと思うのですが、働く自分たちの身体は有限であることも思い知らされます。

セレモニーの一番多い日に誕生日を迎えた私は、自分の年齢とこれからについて、改めて考える機会にもなりました。10年後も同じように働いていることは、難しいのは明らかです。
大きな病気や怪我をきっかけに見直すようなことになる前に、来年は少し、無理のない形で(いま通ってらっしゃる方は続けて通える範囲内で)クラスを減らそうと決めました。

シュタイナーは、大人も7年ごとに成長変容していく節目があると話していますが、その節目でいうと私は48歳になり、七年周期の7週目、ということで第7七年期の最後に当ります。

人は誰でもおよそ42歳で本当の意味での「大人」となる人生の大きな転換期を経て、周囲の世界から吸収することより、周囲に自分が培ってきたものを与える時期に入っていきます。
身体は少しずつ衰えて行くけれども、精神的なクリエイティビティを発展させていくこの7年間は、自分にとってとても仕事が充実して豊かな期間でした。

しかし、次の49歳からの7年間は、もっと自分本来の心の声に耳を澄ます時間になっていきます。
これまでと同じように忙しくしていると、体がダメージを受けやすくなるので、新しい自分のリズムを見つけなければなりません。
次の新しい1年は、そうした自分の精神的な、そして生き方のシフトをゆっくりと、無理なく自然に行っていけるような年にしたいと思っています。

ところで、こうした自分の人生のシフトチェンジをよく同年代の助手さんたちと話し合っている時に、よく話題に出るのはクラスに集う子どもたちのいわゆる「熱量」が、ここのところ圧倒的に増していき、クラスごとの静かな熱がとても燃え上がっているということです。

「熱量」は、なんと言い換えたら良いのでしょう。
クラスへの愛、この場所への期待、喜び、それが時によってはその子の置かれた環境の中で、
ねじれたり、曲がったりして表現されたりもします。
ひとりひとりの向かってくるエネルギーが、とても大きくなっているのです。

その思いを一つずつ受け止め、寄り添っていくことがとても濃厚な時間を生み出しています。
その熱量の大きさの意味を、よく話し合うのですが、
もしかすると子どもたちという存在はいつも、その時代の社会状況を無意識のうちに吸い込んで鏡のように影響を受けていますから、東北においては震災と原発事故以降のこの世界、そして近くではこの2年ほどのコロナ禍の社会状況に置ける私たち大人の様々な意識状態も吸い込んでいるのではないかなと感じるのです。
小学生クラスでは、特にその変化を強く感じています。

そうした子どもたちの大きなエネルギーを受け止めていくためにも、
私たちは元気でいなくてはいけません。
「空元気」ではなく本当の意味で、精神も身体も年齢に沿って内実満ちたものとなるように、
自分自身の声にも、耳を澄ましていきたいと思います。

今年も、「小さな声が聞こえるところ」をご愛読いただき本当にありがとうございました。

みなさま良いクリスマス、そして良い新年をお迎えください。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

 
(この連載は毎月満月・新月の更新です。次回は1/3新月の更新です。)

ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
園長および幼稚園部担任他。
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、2000年に音楽発信ホーム「仙台ゆんた」を開き、アンプラグドのライブ企画など行う。
並行してシュタイナー幼児教育者養成コースに学び、南沢シュタイナー子ども園(東京都東久留米市)にて吉良創氏に師事。
08年仙台ゆんたに「虹のこども園」を開く。
民俗学とロックとにんじんを好む。1973年生まれ、射手座。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)