小さな声が聞こえるところ116「咲いた、咲いた」

 今年の春は、早足。仙台で4月を待たずに桜が咲くなんて、驚きです。
ランドセル姿の入学式で桜が満開というよく見る写真の構図は関東地方のことであって、東北では入学式もとうに過ぎた頃に、校庭の桜が満開になるのが常でした。
ところが今年と来たら、入学式も待たずに満開となりこのまま散ってしまいそう。
これも「異常気象」のあらわれなのかもしれないと心のどこかで思いつつも、春の到来はやはりうれしい。

園の駐車場の隣に咲くしだれ桜の下に入っては、桜色の空気に包まれるのがこの季節の楽しみです。

 園舎の周りも、色とりどりの小さな花が可憐に咲き始めています。
小さな園庭にも、花壇にも、園舎に沿って並んだプランターにも。
並んでつぼみを膨らませているチューリップは、まるで年長児から年少児まで仲良く並んだ子どもたちのようです。

例年、チューリップは5月の連休に咲くことが多く、誰もいない園庭に今がさかりと咲き誇るチューリップをもったいない気持ちで眺めていました。
どうして連休に咲くかというと、きっと私が球根を植えるのがいつも一足遅かったのです。晩秋の、もうすっかり霜も降りそうになってから慌てて掘り上げた球根を植えるものだから、咲くのも遅かったのでしょう。

それに気づいてくださったのでしょうか、幼稚園部のお庭係のお母さんが、今年は入園の頃にチューリップが咲くように少し早めに球根を植えましょうと、きれいにプランターに植えてくれたのがこのチューリップたちなのです。
お母さんの意図した通りに、来週に入園のつどいを控えた今、チューリップはつぼみを膨らまし、待ってましたとばかりに順々に咲き始めています。

幼稚園部にはお庭係や手仕事係、研修係などいろいろな係があってそれぞれのお母さん方が園の仕事を担ってくださっています。長年の中で、それぞれに創意工夫を重ねながらお仕事が引き継がれていく様子にとても感心しています。
小さな私塾の園なので、幼稚園部はお母さん方と一緒に作るもう一つのおうちのようなコミュニティです。みんなで分担して仕事をしていくことで、園の運営が安心して取り行われるようになっています。ここで培われている大人同士の信頼関係は大きなもので、これによって子どもたちもまた安心して世界に信頼感を持ちながら育っていくことができます。目立つ仕事でなくても、見えないところで心を込めて仕事をしてくださっているお母さん方の姿に、いつもたくさんの気づきをいただいています。

新しくやってくる子どもたちは、この小さな花々に迎えられて、はじめての園生活をスタートします。今年も一年、怪我なく事故なく、元気に楽しく過ごせますように。
園の小さな「お地蔵さん」にお祈りして、新学期のスタートです。

(園長 虹乃美稀子)

次回は4月20日新月の更新です。

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ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
園長および幼稚園部担任他。
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、2000年に音楽発信ホーム「仙台ゆんた」を開き、アンプラグドのライブ企画など行う。
並行してシュタイナー幼児教育者養成コースに学び、南沢シュタイナー子ども園(東京都東久留米市)にて吉良創氏に師事。
08年仙台ゆんたに「虹のこども園」を開く。
民俗学とロックとにんじんを好む。1973年生まれ、射手座。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)