コロナ騒動が5月に社会的に収束し、だんだんと「元に戻った」2023年度。気づけば、園の子どもたちももう卒園です。
この年長さんたちとは入園前の親子クラスの頃からのお付き合いですが、コロナの流行り初めの頃は個別クラスや、分室での分散保育をしたりと試行錯誤しながらの日々だったなと思い出します。今はやっと、そうした特別の配慮を考えずとも以前のような暮らしに戻れて安堵しますが、気づけばこの3年の間で見えない変化が大きくなっているようにも感じます。
例えば、最近になって「おめでた」の知らせを続けて聞くようになりました。そうか、コロナの間にはなかなか赤ちゃんを迎えるには厳しい状況が続いていたので、やってくる赤ちゃんが少ないのは最もです。出産に際して、家族や実家の親御さんに頼るのも難しい状況、赤ちゃんが産まれてからも配慮しなければいけないことがたくさんで、この間に出産されたお母さんかたはどなたもきっとそれぞれに大変な思いをされたことと思います。コロナ禍の経済停滞による経済不安も影響したことでしょう。
実際に、コロナ禍により出生率は過去最低となり、政府は「静かなる有事」と「合計特殊出生率」が7年連続で低下し、2022年は1・26と過去最低となったことを伝えています。ちなみに都道府県別では東京都が1・04で最低ですが、それに続いて宮城県が1・09です。園の親子クラスでも今年度は赤ちゃんクラスへの申し込みがなかったので、「赤ちゃんが少なくなった」ということを実感しています。
また、この3年の間に保育無償化の影響も浸透して、子どもがまだ小さいうちから集団保育に預ける親御さんが増え、1、2歳の頃から保育園に通う子どもが増えました。新米お母さん方からは「保育園と幼稚園の違いがわからない」「子育てに自信がないから、二人きりでいるより保育の専門家がいる保育園に預けて、お友達と一緒に過ごせてる方が安心」という声を聞きます。
一方では「不適切な保育」がニュースでたびたび話題になるたびに、保育の場での暴力や性犯罪が増えている現状を憂います。保育の世界が一般企業に市場として開放されたことや、なし崩しの保育無償化(保育料を無償にするのではなく、各世帯への児童手当の拡充や子育て勤労者への処遇改善など子ども中心に考えられる方法はたくさんありました)が今の荒れていく保育現場問題の原因の根っこにあることは、危惧されてきた想定内のことでした。
公立保育士新人時代の30年前、仙台市も8割超えであった市立保育所の一部を順次民間委託していく政策が挙げられ、組合でもずいぶん反対運動が行われていたものでした。自治体としても、明らかに少子化が進むことが見えているなかで、保育所をたくさん維持するのは経済的に難しいと判断するのは自明の理です。
でも国全体で「待機児童ゼロ」を煽って多くの事業者に補助金をばら撒くようにして、保育園事業の条件ハードルをぐんと下げて参入させ、少子化になって事業が行き詰まったり利益回収が見込めなくなると、お店を閉めるように閉園してしまうような今の状況は予想されていたこととはいえ、とても「みんなで子どもを育てよう」という時代の目指すべき方向とは逆に向かっていると思います。
保育の世界は、いま危機にあります。法律が変わり、サービス事業化していく中で子どもたちの健やかな育ちを守っていくことが困難な状況になっています。園長先生方のお話を伺うと、信頼できる保育士を確保することがどれだけ大変なことになっているか、派遣会社からネット情報で面接にくる時代の難しさも聞きます。
社会の子育ての意識も、コロナ禍を経て大きく変化しています。
わらべうたや絵本の読み聞かせ、子育てサークルなどの手作り市民活動がこの3年間、自粛せざるをえなかった結果、親子でそうした場に出かけていく文化も後退し、早々と保育園に入る子が増えました。
私の園の未就園児クラスもやってくる親子さんも、だいぶ減っています。この時代の状況の中で、ここに集まってくださる親子さんとの出会いはますます尊いものとして感じられます。みんなで大切なものを確かめ合っているような感覚です。そして時代の変遷と共に、わたしたちが子どもたちにできることはなんだろう、変わらず守り続けていくことと、変化することでより力になれることの両方をいま、とても考えさせられています。
文・虹乃美稀子
「小さな声が聞こえるところ」は新月・満月の更新です。
次回は3月25日満月の更新です。
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