お弁当にと、ゆで卵を包丁で半分に切る。
そのとき、包丁についた卵の黄身の少しのかけらを見て「メダカの赤ちゃんにあげなきゃ」と思ってから「ああ、もうメダカはいないんだなあ」と思い直す。
そんなことが続いていたこの季節。
園では、2017年から6年間、野生メダカを飼っていました。
ほぼ毎年卵が孵化していました。
「野生」というのは、東日本大震災で被災した仙台のメダカのことです。
メダカは、同じ種であっても遺伝子レベルでは地域によって異なる集団に分けられるそうで、その地域のメダカはそこにしか存在しないメダカとなるそうです。
現在メダカそのものが絶滅危惧種となっていますが、それは全国各地で遺伝子レベルでの地域個体群が絶滅してしまっているということでもあるのですね。寂しいです。
仙台市沿岸部の農地に野生で生息していたこのメダカは、津波でまるごと流されてしまいました。絶滅したと思われましたが、宮城教育大学に研究目的で採取されていたメダカが残っていることがわかり、仙台市八木山動物公園との連携で「メダカの里親プロジェクト」が発足し、園のメダカもその一環で分けてもらってきたものです。
譲り受けてきてすぐ産卵し、それからは毎年卵を産んで稚魚になり、ということを繰り返してきました。稚魚が成魚になるのに成功した年もあれば、卵を成魚に食べられてしまったり、うまく育たなかった年もあります。
それが昨年、ある程度まで稚魚が育ったときに生まれたメダカが全部消えて(おそらく死んで)しまうという不思議なことがありました。(稚魚は成魚に食べられないよう分けて育てていました)
そして、成魚も年を重ねて次第に死んでいき、とうとう1匹も残らなくなってしまいました。
実は、同じ水槽で少ない個体数の同じ顔ぶれで飼い続けると、年を重ねるうちに交配を重ねた遺伝子は弱くなり、最後には消滅してしまうのだそうです。
なるほど、人間も少し離れた村からお嫁さんを連れてくる、というようなことで移動の少ない時代にいわゆる「血のまじり」を濃くしない配慮が自然とされていました。これはメダカも同じのようです。水槽で飼っている時点ですでに「野生メダカ」とは言えないのですね。
そうしてメダカのいない園となってから数ヶ月、新月の今日、子どもたちと出かけた森の小川でメダカを捕まえてきました。今まで何度も行っている場所なのですが、メダカを見つけたのははじめてです。森の湧水のきれいなところです。
数匹連れて帰ってきました。また園で育てようと思います。
今度は、川に戻したり、新しい仲間を連れてきたりして、メダカにとって「終の住処(ついのすみか)」とならない水槽にしようと思います。
文・虹乃美稀子
「小さな声が聞こえるところ」は新月・満月の更新です。
次回は6月22日満月の更新です。
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