小さな声が聞こえるところ158「愛はこの光の熱である」

 11月に新しいお友達が増えました。転園生です。
最近は、市内の他園から途中入園してくる子が以前より増えました。

その理由はご家庭それぞれですが、いろいろ悩んで転園を決めてこられたお子さんが新たに虹のこども園の仲間となるとき、その子が自分らしくここで輝いていけますようにと祈るような気持ちでお迎えします。

そうして、ここでの暮らしに安心して馴染み、自分を出しながら、次第に大人にもお友達にも信頼を培って、生き生きと過ごせるようになったとき、心底喜びを覚えます。
ああ、虹のこども園を開いていてよかったなあと思うのです。


「自分を出す」と一言でいってもその表現はさまざまです。
大泣きする子、みんなの輪に入らずにずっとすみっこから動かない子、手が出る子も、足が出る子に、大暴れする子だっています。
みんな、どんとこいです。

こちらはこの道30年、ちょっとやそっとでは動じません。
時にはこちらも仁王立ちで向かうこともあります。
シュタイナー園の先生だからといって、いつもにこにこ優しく、小鳥のようなさえずりでお話しているばかりではありません。
必要があれば、「叱り飛ばす」ことだってあるのです。

でも、不思議ですね。
しっかり叱られた子どもは、たいていその後、うれしそうにぺったりとなついてきます。
関係がより深まって、安心して甘えてくるようになるのです。

「叱る」と「怒る」は違います。
怒ることは、怒りの感情を子どもにぶつけること。子どもの心を重くします。
叱ることは、感情をぶつけることとは違います。
子どもはいまどんなふうにこちらの言うことを受け止めているのか、顔色、しぐさ、表情、すべてを把握しながら、伝えるべきことを大人自身が自分を俯瞰しつつ伝えます。

その真剣に向かい合う熱は、子どもの心にまっすぐに届くのですね。

今は「自主性」を育てることが幼児期から大事にされていますが、
どうすれば本当にその子自身の意志の力である「自主性」が育っていくのか、
深く考えられないまま「自由でのびのび」が「放任」と紙一重になってしまっている保育の場も少なくありません。

保育の多様化、預かり時間の長時間化、また保育そのものがサービス業化していくなかで、その子の人格を親御さんとともに育てていくという責任感が保育者側にも薄れていくと、場当たり的な保育になってしまいがちです。

そうして、しっかり向かい合われずに、糸の切れた凧のようになってしまった子どもたちが、安易に「発達障害」の疑いとされてしまうケースも少なくないように見受けられます。

私の好きなシュタイナーの言葉に「光は認識によってもたらされる。そして愛はこの光の熱である。」というものがあります。

認識しよう、ということは、その子どもに深く関心を持つことです。
関心を持つこと、それは「熱」があるからです。
「愛したい」という大人の魂の熱が、子どもへの真の理解(認識という光)につながっていくのです。

その熱を失わないようにー いつも自分に言い聞かせながら今日も教室に立っています。


(文・虹乃美稀子)

 いつもお読みくださりありがとうございます。
「小さな声が聞こえるところ」は新月・満月の更新です。
次回は12月31日新月🌚の更新です。

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ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
園長および幼稚園部担任他。
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、2000年に音楽発信ホーム「仙台ゆんた」を開き、アンプラグドのライブ企画など行う。
並行してシュタイナー幼児教育者養成コースに学び、南沢シュタイナー子ども園(東京都東久留米市)にて吉良創氏に師事。
08年仙台ゆんたに「虹のこども園」を開く。
民俗学とロックとにんじんを好む。1973年生まれ、射手座。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)