毎月、東京での定期講座の仕事ために上京しています。
上京中は妹家族の住む代々木の家にお世話になっています。
もうかれこれ10年以上続く私の毎月のルーティンです。
しかし今年はコロナで春から夏まで上京は見送りました。
こんなに長い間上京しないのも、そして妹家族の甥、姪と会わないでいるのも初めてです。
9月に半年ぶりに上京して再会した時には、感慨深いものでした。
甥はこの夏に4歳になったばかりの幼稚園年少生。
言葉も動きも達者で、小さな頃から愛嬌のある子どもです。
コロナで自粛中もオンラインでやり取りするたびに
「コロナが落ち着いたら、東京に来てね!」とか
「仙台にいくからね!」というやり取りを重ねてきましたが、
私がいよいよ9月に上京したことで、どうも「行き来ができるようになったかも」と勘付いたようです。
今月上京した時には、最初から「みきこ先生(甥姪は私をこう呼びます)と仙台帰りたいな〜」と言ってきました。
幼子のあどけない言葉と思って「そうだね〜」と聞き流していました。
翌日、仕事を終えて深夜に帰宅すると、枕元に彼の描いた絵が置いてありました。
私の顔で、その周りには「早く一緒に仙台に帰ろうね」と書いてあると、翌朝説明してくれました。
ーもしかして本気かもしれない、と少しだけ思いました。
その日も仕事で遅く帰り、翌朝はもう仙台に帰る日。
10時東京駅発の新幹線に乗るため、少し急いで朝ごはんを食べていると、
甥が本気の顔で「みきこ先生と仙台に帰る!」と言います。
「お母さんいなくて平気なの?」「大丈夫」
「夜もおばあちゃんと寝れるの?」「2回泊まる!」
ー彼は全くもって本気で、3日かけて決意を固めていたのでした。
慌てて私の家の近所に住む実家の母に電話をし、甥を連れ帰ってもいいかを聞きました。
コロナ感染に慎重で、自粛生活の続いている両親でしたが、孫かわいさに負けたのか、連れてきていいと言います。
「Kくん、おばあちゃん来てもいいって。いますぐお泊まりの準備して出かけられる?」
「やった〜〜〜〜!!!!」甥は飛び上がり万歳をしました。
そして本当にものの20分でお母さんにお泊まり旅行の準備をしてもらって、意気揚々と出発したのです。
新幹線に乗っている間もずっと上機嫌でした。
姉の姪と二人で過ごすことは度々ありましたが、弟の甥と二人で出かけるのは初めてです。
しかし全く手がかからずに、車窓を眺めたり、おやつを食べたりしています。
(大宮からすでにもう仙台?と何度も聞かれはしましたが、、、)
仙台駅に無事に着いて、東仙台に向かうため東北本線に乗り換えました。
東仙台駅は、仙台駅から一つ北上するだけなので4分で着いてしまいます。
さあ、到着まであと一息、、、と思ったところで、
東北本線に乗り込んだ甥が
「お腹痛くなってきちゃった」
「この電車は(新幹線と違って)トイレないよね?」と言い出しました。
新幹線の中で、おやつのプルーンを食べ過ぎてしまったのがちょっと気になっていたところでした。プルーンは、お腹を緩くさせる効果がありますから。
この東北本線は快速で、うっかりすると石巻まで行ってしまいます。
一瞬、焦りました。
「すぐ着くから我慢できる?」と聞きかけて、自分だったら我慢なんかしたくないよな!と思い、乗り過ごしてもいいからトイレに連れて行こうと思いました。
東北本線は、ありがたいことに車両内に多目的トイレがあるのです。
トイレに入り座らせましたが、新幹線と違って一般電車はとても揺れます。
甥はすっかりこの非常事態なシチュエーションに気を取られて、
あちこちトイレの中をキョロキョロしたり、揺れにいちいち驚いたりと興奮気味。
しかし、あまり時間はありません!
私は彼が便意に集中できるよう、自分の意識を彼の便意に重ねるように集中しました。
「出るかな〜、出るかな〜、揺れるね〜、電車のなかでうんちできるなんてすごいね〜」と言いながら、なるたけ気持ちを焦らず、集中するように心がけました。
まさに BE HERE NOWー です。
そうしたら彼も一気にそこに集中して、するっと素晴らしいものが出て、トイレから出ることができました。たった3分ほどのことでした!
そして車両の皆さんが見守る中、トイレから出てきた彼はそのまま車両先端部へと直行し、続く線路の風景を満足気に眺める余裕まであったのでした。
幼い子どもの排泄に付き合う時に、こんなことが間々あります。
大人が焦ったり、心配したり、不安になったりすると、
子どももつられて「できない、出ない」になってしまいますが、
ちょっと大丈夫かな?と思う状況でも、
大人が「ぜったい大丈夫!」と世界への無条件の信頼の気持ちで向かい合い、
今ここーBE HERE NOWの意識でいると、
子どももそこにすーっと引き込まれて、
「できる」ようになるのです。
排泄は人間の生理現象の一番根っこにあるものであり、
非常に日常的な現象ですが、
だからこそ急かしたり、不安を膨らませたりすることのないよう気をつけて、
大人はどっしり寄り添ってあげていたいなと思います。
幼児期は子どもの「頭に働きかける」よりも「からだに働きかける」ことが大事であることの、ひとつの具体例です。
(この連載は毎月満月・新月の更新です。次回は11/15新月の更新です。)
文・虹乃 美稀子(園長/担任) 公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、 シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。 南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。 06年シュタイナー親子クラス開設 08年「東仙台シュタイナー虹のこども園」開園 仙台・東京・岩手にてシュタイナー講座・子育て講座を通年開催 著書「小さなおうちの12ヶ月」(河北新報出版センター) 新著「いちばん大事な子育ての順番2020/11/11刊行予定(青春出版社) Facebook|東仙台シュタイナー虹のこども園 Instagram|@steiner_nijinokodomoen |