小正月の団子の木を作り、ライゲンで「ねずみの餅つき」もひととおり踊り終えると、そろそろお正月気分もおしまい。
1月も後半になると、市内の小学校に上がる子どもたちの各学校に出向いて、保育者が小学校教師に引き継ぎをする「幼保連絡会」が始まります。
いよいよ、子どもたちにも巣立ちの春が来る予感を感じさせる季節に入りました。
ある朝、私は風船をぷうっと子どもたちの前で膨らませて見せました。思い切り頬と、おそらく鼻の穴も大きく膨らませているであろう私の顔を見て、子どもたちは大笑いします。
ひとつ、ふたつ、みっつ。3個ほど膨らませてから、半紙をビリビリと豪快に破き始めます。
初めはきょとんと見ていた子どもたちですが、年長児はそれを見て「ああ、あれね!」「あれ作るんだね〜」としたり顔で頷き始めました。
風船は、遊ぶために膨らましたのではありません。
実はこれは「張り子の面」の土台となるのです。なんの張り子でしょうかって?
お正月が過ぎたら、立春を迎える前に追い払わなくてはいけないものはなんでしょう?
そう、答えは「鬼」です。
年長児は毎年、節分に立派な張り子の鬼面を作るのです。
まず風船に白い半紙を貼ります。その上に、新聞紙を千切ったものを幾重にも張り固めます。
仕上げに、その上に赤鬼なら赤い色紙を、青鬼なら青い色紙を千切って貼っていきます。
糊を水で溶き、刷毛で塗ってその上にこうして様々な種類の紙を重ねて貼っていく作業はとても根気のいる作業です。
ひとつの風船で、二つのお面ができるので、二人一組のチームワークで進めます。
就学を控えた年長児ならではのチャレンジです。
色紙まで塗り固めて乾かしたら、先生にカッターで半分に割ってもらいます。
あのゴムの風船が、まるでスイカのようにパックリと割れて、お面の土台が生まれます。
そこに目や口を切り開きます。
つり上がった目にすれば迫力あるこわい鬼、垂れ下がった目にすればなんとも愛嬌のある笑い鬼、、、目元一つで表情が大きく変わることも、子どもたちには発見です。
「このお面は大人になっても使えるから大事にするんだよ」
そんな風に話すと、子どもたちは神妙に頷いています。
昨年から鬼をテーマにしたアニメが空前の大ブームを巻き起こしていることもあり、鬼の話題が熱いようです。東北でもあちこちで、鬼にまつわる伝説や昔話などが改めて取り上げられたりしています。コロナもまた、疫病の鬼のようなものでしょうから、今年の豆まきは気合いを入れて行いたいものですね。
園の豆まき会では、鬼が去るとひょうきんな福の神がやってきて、「福の舞」を舞い踊ります。
仙台の雀踊りをたしなんだ先生が、福の神のお面をつけて踊るのです。
園の全くのオリジナルですが、毎年やっているのでこれは園の「伝統民俗行事」のようなものかもしれません。
昔ながらの豆まきの声がけをご存知でしょうか。
「鬼は外、福は内、天打ち、地打ち、四方打ち。鬼の目ん玉ぶっつぶせ」と言うのだそうです。
鬼が去れば、翌朝は立春。
春ももうすぐ、そこまでです。
(この連載は毎月満月・新月の更新です。次回は2/12新月の更新です。)