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小さな声が聞こえるところ100 「”素”の時空間で育まれるものーspirituality」

 

 小さな声を、新月と満月の日にここに書き記しはじめて、100回目を迎えました。
今日は、満月です。一つの節目が満ちたような喜び。
何より、こうして読んでくださっている皆さん、ありがとうございます。
時々、思いがけないところから「いつも楽しみにしています」とコメントいただいて、嬉しく感じています。

100回目の今日は、少し個人的なことを書こうと思います。

私は幼い頃、ちょっと人見知りで、自分の世界で空想を重ねて遊ぶのが好きな子どもでした。母が共働きで、幼稚園から帰ると祖父母の家に預けられていたのもあるし、もともとの気質もあったと思います。

自分の世界を構築しすぎたのか、元々が不器用なのか、小学校に上がるとお友達や先生という教室の「社会」と馴染むのにそれなりに苦労しました。
自分がなんとなくみんなと感じ方や面白がり方が違うような気がして、周りの友達を観察して「普通はこんな風に感じたり、反応するのだ」と真似してみたり、合わせてみたり。学校から帰れば、子どもがあふれていた時代ですから、近所の年齢の違った子どもたちとも毎日のように遊ぶのですが、それに疲れると、また一人の世界に没頭して遊びます。

郊外の住宅地で育ったので、山を切り開いたばかりの気配がまだ残っていて、家の隣までキジが降りてきたり、山鳩の鳴き声がいつもしていたり。緑はむせるほどに濃くいつも身近にあって、そうしたものにも知らず知らず癒されていたようです。

こうした思い出を書きながら、自分がとりわけ「変わった子ども」「特別な子ども」だったとは思いません。
本来子どもというのは、みんなそうしたものだと思います。
「多様性」とは、生まれながらにひとりひとりのオリジナリティ(そしてそれこそがスピリチュアリティ=霊性・精神)があるからこその表現です。

成長を重ねて少しずつ、ダイヤモンドの原石が切磋琢磨されるようにして、社会性を身につけながら「わたしらしいわたし」に変容していく過程となるのでしょう。

時間が、無限にあったように感じています。
当時も習い事は色々流行っていましたが、私はエレクトーンとそろばん。
他にも公文(くもん)とか、習字とか、その都度友達のやっているものを自分もやってみたいと言いましたが、経済的な理由とそんなにあれこれやっても身につかないというのを理由にやらせてもらうことはありませんでした。

まったく正しい親の判断だったと思います。
なぜなら「何にもしない」ボーっとした時間を、そうしたスケジュールによって盗まれることがなかったからです。
退屈を重ねて飽き飽きすることが、いっぱいあったように思います。
飽き飽きした先に、遊びが生まれてくることもあれば、
飽き飽きした先に、どうでもいいきょうだい喧嘩が始まったり、
ただただ無為に時間が過ぎていく世界の中で、目覚めはじめた自分の「内側の世界」に起こる表現できない色々な感情を感じていたり。(これは9歳前後からでしょう)

こうしたことが、実は子ども時代にはとても大切で、人間の生き抜く根っこの力を太らせる、大切な時間なのではないかと考えています。

情報化社会の中で、私たちは「意味のあること」「頭で理解して説明できること」「輝いていること」などに重きをおきがちです。
子どもたちが、無為にゴロゴロしているのを見ると、なんだか時代に取り残されていくような気持ちになってしまうかもしれません。

でも、見栄えのしない、いつもと変わらない、飽き飽きするような繰り返しーそうしたものの中に、静かに横たわっている「時間」をぼんやりと味わうことは、人間形成の過程で決して軽んじられない重要な位置を占めているのではないかと思うのです。

スケジュールに追われている現代の子どもたちを見ていると、
もっと自由な時間を!と心から思います。
確かな「個」を育む「自主性」や「自己肯定感」は目の前のハードルを飛び続けるような暮らしの中では、育っていかないのです。
プライベートな時空間も必要です。
集団の中にいる時間が長いと、自分自身の「素」に還ることが難しく、本当の自分がどう感じているかをわかりにくくさせます。

スケジュールをこなすのではなく「有り余る時間を、自分主体で過ごす」こと、他者の視線を気にせずにいられることが、その先の人生において「自分自身で人生の舵を取る」ことのできる人に育っていく土台となります。

その子が、その子らしくいられる素の時空間を、守ってあげたい。
人間が人間らしくある基盤となるスピリチュアリティは、
大人社会の尺度では測れない、子ども時代を保証されることから育まれます。

自分の子ども時代を振り返りながら、わたしがこの場所でやっていきたいことというのは、結局のところここに尽きるのだよなと、100回目の小さな声に託しています。

読んでくださり、本当にありがとうございます。
書く機会をいただいていることに、感謝します。

虹乃美稀子

(この連載は毎月満月・新月の更新です。次回は8/27新月の更新です。)

 

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ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。

2008年「東仙台シュタイナー虹のこども園」を開園。幼稚園部を中心に、未就園児親子クラスから小学生クラスまで、12年間にわたる子どもの成長を見守る草の根の教育機関として運営。
東京をはじめ、全国各地でシュタイナー講座・子育て講座を開催。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)