すっかり太陽暦での暮らしが身についた日本人ですが、月のリズムは変わらずにこの自然界の生き物たちに見えない力を持って働きかけています。
「新月伐採」という言葉があるように、樹液の流れが下降して根部に集中し、幹や枝の部分の樹液が少ないことによって良材が採れる冬季の新月に伐採するとか、種蒔きは満月の5日前から満月の前日までにすると、上弦の月から満月にかけて樹液が幹や枝部分に上昇し、根っこが出た後に芽が出ることで、養分を吸う条件が早く整い、丈夫な苗に育つと言われています。
自然界に即した仕事をしている林業や農業に携わる人たちは、月のリズムのもたらす影響をいまだに身体感覚で受け取っている方が多いのかもしれません。
私の母は戦後生まれですが、長く続いた農家で育ったので、中学生くらいまでは(昭和30年代後半)学校を休んで旧暦の正月を家族で祝っていたそうです。
時代が下り、いわゆる「新月のソウルメイキング」といった「新月に願を立てる」行為が流行ったりしましたが、かつては新月(朔日)が月の始まり(一日)でしたから、新月に何かを新しく始めるといったことが似つかわしく感じられるのは自然なことでしょう。
さて、園では季節の祝祭(行事)を、本来の意味を丁寧に解釈しながら祝うということを大切にしています。
シュタイナー園ならではの、ミカエル祭やクリスマスといった行事があります。
一方で、日本古来の民俗行事も大事に取り組んでいます。
ひな祭りや七夕、お月見やお正月などの日本行事は、太陰暦(旧暦)に基づいた伝統なので、その由来を紐解いていくと、旧暦の季節感にこそふさわしい行事であることに気づかされることもよくあります。
たとえば七夕などは俳句では秋の季語となるのですが、旧暦七月七日は立秋(新暦八月七日頃)を過ぎているので、この頃になると空も澄んできて星もきれいに見え始めるのです。新暦七月七日は、仙台ではたいてい梅雨の真っ盛り。天の川は梅雨空の向こうに隠れて、到底見えません。
それぞれの家庭生活や地域社会と、行事の季節感が足並み揃っていることも大事だと思うと、そこまで踏み切る事もしませんでした。
ただ、この旧暦正月を迎えるまでの1月の保育の中で、園では改めて年の暮れを思わす昔話や人形劇をしたり、ライゲンをしたりしています。
12月はクリスマスに関連する取り組み一色となり、クリスマス会が2学期の最後の締めとなるので、日本古来の年の暮れと正月迎えの空気感は、1月下旬から立春を迎える間のこの旧暦正月のあたりに、じっくりと味わえるようにしているのです。
「かさじぞう」の人形劇は、子どもたちも大好きな人形劇です。
大寒の季節に、お地蔵様を「寒そうだ」と憐れんで、ひとつも売れなかった笠を全てお地蔵様にかぶせるどころか自分の笠までお地蔵様にあげてきたおじいさん、そんな手ぶらで帰ってきたおじいさんを怒りもせずに、「すっぽり飯(ただのご飯)で正月を迎えよう」と温かく迎えたおばあさんに、子どもたちは心から安心するのです。
シュタイナー教育というのは、画一的なマニュアルや決め事があるようで、実はありません。
どの教育現場も教師や保育者たちが「自分の頭で考えて、自分たちで納得して決める」ということを大切にしています。
なぜなら、子どもたちの模倣対象となる大人こそが、そうした「自由な態度」を実践していなければならないからです。
行事のあり方もそうで、思考と検討を重ねる中で虹のこども園らしいあり方を模索してきました。
今年も変わらぬことの尊さを思いつつ、しかし変化は恐れずに、今を生きる子どもたちに必要な力を育てていきたいと思います。
(園長 虹乃美稀子)
次回は2月6日満月の更新です。
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