小さな声が聞こえるところ114「自然発生の合奏会と人形劇」

 教室の奥には、一段上がったステージのようにも見える小部屋があります。
以前も書きましたが、ここは元ガレージ。10年近く前に、園児が増えた時に増築してできたお部屋です。
腰高の窓を外して出入りするようにしたので、床と天井が近く、大きな大人だと頭がつかえそう。でも、子どもたちにはちょうど良いサイズなのかもしれません。小さなところ、狭いところが子どもたちは大好き。食後は食べ終えて歯を磨いた子から、ここで遊んでいます。

私が療養から復帰してすぐ、子どもたちとここで「わらべ歌かるた」をやりました。「わらべ歌かるた」は、仙台の老舗絵本やさん「横田や」さんで買えるのですが、わらべ歌を歌うのを読み札がわりにして、字の代わりに歌の内容を描いた絵札を取るもので、絵札の版画絵も素晴らしく、園では長年子どもたちに愛されています。

 復帰して一緒にわらべ歌かるたをするのを楽しみにしていてくれた子どもたちに私もすっかり嬉しくなって、その日はわらべ歌を歌いながらナタマメ(巨大な豆が乾燥してそのままパーカッション楽器となったもの)をマラカスのように振って調子づいていました。そしたら子どもたちが一緒にマラカス振ったりし始め、すっかり楽しくなりました。

 そして、その翌日からです。
食後の時間に年長の男の子の指揮のもと、みんなでマラカス片手に合唱する「合奏会ごっこ」が始まりました。
2日くらい続けて食後に盛り上がっているなと思っていたら、3日目あたりから、イスや細長いテーブルを並べてひな壇を作り、楽器ごとの配置を決めたり、「何の曲目をやるか?」といった話し合いが始まり、とうとう指揮役の子に合わせて「合奏会」というステージが出来上がっていました。
大人の関与は一切なく、自然発生的に始まっているのですが、演奏は調和が取れています。すっかり感心してしまいました。

遊びの展開は早いので、この合奏会ごっこは正味1週間くらいで下火となり、今度は「人形劇会」が始まっていました。
これまた、私たちが園で子どもたちにやってみせるような、身近にあるおもちゃや布を使って素朴な「見立て」をした人形劇を模倣しています。
いつも教室にある小さな木製の小人や動物たちを使って、見事な「お話」が展開されていました。即興のお話ですが、途中で小人や動物が倒れてしまう「アクシデント」があってもそれもお話の中に組み込まれて、流れるように進んでいきます。
それを年下の子どもたちが、感心してそれは静かに見入っています。
子供の中から自然発生した、こうした芸術活動はなんと尊いのでしょう。
園では運動会や発表会といった大人に見せるための行事はしませんが、こんな芸術的な遊びが暮らしの随所に溢れています。

 「やらせるてできる」ことと、子どもたちが自分の意志でやりだすことには、大きな違いがあります。
こんな遊びが子どもたちから発生しているときは、その集中を壊さぬように大人は「見て見ぬふりの見守り」をキープすることで、遊びが深まっていきます。
写真を撮るのも気づかれぬよう、集中を削がぬよう、そうっと。

「人形劇会」を見終えた子どもたちは、満足の表情を浮かべて降りてきて用意された自分の椅子に座り、お帰りのお集まりが始まりました。

 

(園長 虹乃美稀子)

次回は3月22日新月の更新です。

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ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
園長および幼稚園部担任他。
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、2000年に音楽発信ホーム「仙台ゆんた」を開き、アンプラグドのライブ企画など行う。
並行してシュタイナー幼児教育者養成コースに学び、南沢シュタイナー子ども園(東京都東久留米市)にて吉良創氏に師事。
08年仙台ゆんたに「虹のこども園」を開く。
民俗学とロックとにんじんを好む。1973年生まれ、射手座。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)