小さな声が聞こえるところ123「布ナプキンがあるよ〜性教育の第一歩に」

 ここのところ、ジェンダーの問題、LGBTQに関する法律をめぐる問題など、人間の「性」に関する話題が社会で取り上げられることが多いですね。
その中で、女性の「生理(月経)」についても、ジェンダーを超えての理解を深めようという教育が活発になっています。

東海大学の小貫大輔教授は、アントロポゾフィストのアクティビストとして性教育問題にも活発に取り組まれています。(最近ではNHKの「おはよう日本」にも出演・解説されていました)
ご自身のyoutubeチャンネルでも色々と性教育について発信されていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

「生理についてみんなで話そう!」なんてことは、私が小学生だった昭和の時代には全く考えられないことで、青森で小学5年生を迎えた私は、確か林間学校を前に女子ばかりが特別教室に集められて、布ナプキンの使い方などを説明されたような気がします。
そこには何か、「女」だけで密やかな秘密を共有したような、しかし同時にこれから出ていく世の中には、世間の表に出してはいけない「タブー」があることも暗黙のうちに伝えられたような「秘密の」時間でした。

令和の今、そのタブーはジェンダーレス化の動きとともに、大きく変化しようとしています。新聞でも、男性記者が生理の痛みを実際に体験するために電流により痛みを引き起こすプレートを腹部に装着してみた記事などが掲載される時代です。意識の変化を大きく感じます。

同時に女性の貧困の問題が生理と結び付けられて語られるようにもなりました。
不況が長引き、特に女性の貧困問題が目立ってくるようになり、「生理用ナプキンも買えない」状況に悩む若い女性たちが増えているというのです。ついナプキンを替える回数を減らして節約しようとして衣服を汚してしまうとか、ティッシュペーパーを折りたたんで代わりに使って布団を汚してしまうとか。

こうした記事を見るたびに「ちょっと待って!」と心の叫びが。
「布ナプキンが、布ナプキンという素晴らしいものがあるよ〜!」と叫びたくなるのです。
布ナプキンは、読んで字の如く、布で作った生理用ナプキンで、布もシルクを使ったものから丈夫な綿のもの、麻のものまで様々なものが販売されています。
買わなくても、なみ縫いさえできれば、誰でも縫えます。
羽のあるいわゆるナプキン型でなくても、折りたたんで使う四角いハンカチ型はより簡単です。

私はおよそ25年間、この布ナプキンを使い続けました。外出の時も、旅行の時も。
最初のきっかけはやはり「節約」でした。市職員の仕事を辞めて、シュタイナー教員養成コースに入った若い頃、本当にお金が無かったのです。

ナプキンは使い捨て、という思い込みがあった始めは、自分の経血を布に染み込ませてそれを洗ってまた使う、という方法に若干の抵抗はありましたが、使ってみたらなんてことはない、自分の下着を洗うように当たり前の自然なことでした。
何より使ったナプキンが臭うのは、自分の経血の臭いではなく、使い捨てナプキンのさまざまな化学物質と混ざって蒸れた臭いなのだということがよくわかりました。
経血そのものは病気じゃない限り、甘酸っぱいような匂いで嫌な臭いではありません。

そもそも市販の使い捨てナプキンは、「紙ナプキン」と呼ばれますが「紙」ではできていません。ポロプロピレンやポリエステルといった化学物質でできています。粘膜のあらわになった部位にこうしたものを長時間充てていることの影響は、生理を重くしたり女性の病気を誘発する原因になるとも言われています。
何より布ナプキンは、肌触りがとても良く、快適です。また自分の経血の状態を常に五感で確認できるので、自分の体の状態に意識が向きやすくなります。

お手入れも簡単で、専用の蓋付バケツを用意し、そこにセスキ炭酸ソーダ(今はほとんどのスーパーで売っています)を溶かした水につけておけば、水さえ換えれば夏場でも1〜2日はおいておけます。アルカリ水となるので血液落ちはとても良く、ざっと下洗いすればそのまま洗濯機に入れて洗えます。

ナプキンそのものも、大変長持ちします。
自分でネル地で作ったもの、アメリカ製の丈夫な綿製のものなどは20年保ちました。使い捨てナプキンを買い続けたら、いったいどれだけのお金を使い、ゴミを生み出していたかと思います。

私は度々、小学生クラスにやってくる女の子たちと、布ナプキン作りをしてきました。
布を茜で染めて、ちくちく周りを縫う手仕事は小学生でもできます。
縫いながら少しずつ生理のことについて、またその対処についてお話ししていきます。
こうして手作りした布ナプキンを用意すると、子どもたちは生理が来るのを愛おしく待つことができるようです。

「こんなに生理が大変なの!」という情報だけでは、「女性は生理があるから損」という感情を引き起こしかねません。
生理があることは、女性の体を健やかに保つ、素晴らしい「生理機能」です。
生理が重くなっている現代の女性の要因には、ストレス過多や睡眠不足、食生活の乱れや冷えなども大きく影響しているかと考えられます。
生理が重いということそのものが、「生活を変えて!」という体からの大きなサインなのです。
どうかこの時代に、布ナプキンがもっと広まることで、自分の体と向き合い、体の声を聞きながら暮らすスタイルが当たり前になっていってくれたらと思います。

写真は、先日訪れた大沢温泉(花巻南温泉郷)で偶然開催されていたジブリの鈴木プロデューサーによる「鈴木敏夫とジブリ展」より。
鈴木さんはこちらの湯治部によく来られているそうで、、、
鈴木さんのこの書のメッセージを最後に!

次回は8月2日満月の更新です。

 

ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
園長および幼稚園部担任他。
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、2000年に音楽発信ホーム「仙台ゆんた」を開き、アンプラグドのライブ企画など行う。
並行してシュタイナー幼児教育者養成コースに学び、南沢シュタイナー子ども園(東京都東久留米市)にて吉良創氏に師事。
08年仙台ゆんたに「虹のこども園」を開く。
民俗学とロックとにんじんを好む。1973年生まれ、射手座。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)