小さな声が聞こえるところ177「どっしりと、冬を迎える準備を」

 気づけばもう、10月も残りわずか。残暑が厳しく9月中ばまで冷房をつけていたので、夏から突然秋が来たよう。戸惑ううちに、はや晩秋に近づいてきました。

ここ数年、「異常気象」が続きすぎて「異常」が「通常」になっています。地球温暖化による気候変動について、誰しもが否が応でも思い知らされるような猛暑が続いています。

「地球はどうなっていくんだろう。」そんな漠とした不安を、多くの人が抱えているのではないでしょうか。

振り返れば5年前、2020年の新型コロナウイルスによる「世界全体の非常事態」は、3年もの月日にわたり社会に不安と混乱と、それによる分断をもたらしました。
また、そうした個人のカルマを超えた抗いがたい社会状況によって、命はいとも簡単に失われたりするのだという恐怖も、身近に感じさせられました。

そして、ウクライナやガザで続いてきた痛ましい戦争。子どもたちもが犠牲になっているというのに、終わりが見えない争いに心痛めながら、無意識のうちに無力感を感じている人も少なくないのではないでしょうか。

新型コロナの感染が収束し、社会も個人生活も「通常」を取り戻したかのようですが、実はコロナ前と比べて、世界の人々の意識も心情も大きく変わっているのではないかと思うこの頃です。

一気にさまざまな場面でのデジタル化/オンライン化が進む中で、生成AIは日進月歩の勢いで人間社会で幅を効かせるようになりました。コロナ禍で経験したさまざまな不安や混乱、恐怖や孤立感といったもののいわば「後遺症」を、相談相手や恋人を代行する生成AIのチャットによって癒してもらっている、そんな風にも見て取れます。

急激な季節の変化も相まって、心身の不調を訴える人がとても多い印象の最近です。ぐっと冷え込むようになってくるので、温かく過ごしたいのはもちろんですが、こうした地球の気候変動、世界状況が大きく動く時代に、自分の中心をしっかり持って、元気に過ごすためには、自分の土台を強化させることが必要です。

そのためには、体をよく使うこと、というのが大事なポイントになってきます。例えば、散歩などよく歩くこと、汗をかくくらい運動すること、お風呂でゆっくり温まること、庭仕事をすること、おいしいご飯を作ること、などです。

なんだ、そんなことかと思われるかもしれませんが、掃除や洗濯といった家事も、意識的に行うことで意識を体にしっかりグラウディングすることができます。お掃除ロボットに掃除機をかけさせるのと、自分で床を雑巾掛けするのとでは、爽快感が全く違います。「便利であること」を選択し続けると、残念ながら私たちの生命力は元気を失うのです。

暮らしの土台から大人たちが自分自身を取り戻すことによって、落ち着いて子どもたちのことを考えることができるようにならなければ、と思います。
世界の急激な変化に大人が漠とした不安を抱いていると、自ずと子どもたちにも伝わります。
すると自分がこの世界で生きている意味が見いだせなくなったり、自己を信頼する気持ちも育たなくなってしまいます。

暮らしの根っこを大事に生きることが、今とても大切になっている、そんな気持ちがしています。

これから寒くなる季節、そんなことを意識しながらどっしりと暮らしに根を下ろして、冬を元気に迎えたいですね。
まずは温かなスープをコトコト煮るところから始めましょうか。

「小さな声が聞こえるところ」は新月・満月の更新です。
次回は11月5日満月🌕の更新です。

 

ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
園長および幼稚園部担任他。
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、2000年に音楽発信ホーム「仙台ゆんた」を開き、アンプラグドのライブ企画など行う。
並行してシュタイナー幼児教育者養成コースに学び、南沢シュタイナー子ども園(東京都東久留米市)にて吉良創氏に師事。
08年仙台ゆんたに「虹のこども園」を開く。
民俗学とロックとにんじんを好む。1973年生まれ、射手座。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)