小さな声が聞こえるところ28「子どもとの向き合いは直感が9割」

 小さな子どもと暮らすことは、とっさの判断を求められる場面の連続です。

ーこんなところでおしっこ!?
駄々をこねて、泣き止まない!
またなんか食べたいって言い出す!(さっきご飯食べたばかり)
忙しいのに、今このタイミングで!?

子どもも大人も穏やかにこの場を切り抜けられる最善の答えって、なに?
育児書には何て書いてあったっけ?
ネットではこんな「ぶっちゃけ」の意見が書いてあったな。
まずいとわかりつつ、その場しのぎをしてしまう、、、

子どもとの「ハプニング」が生じるたびに、
より良い答えを求めつつ、「現場」は常に待った無し。
考える隙も与えてはくれません。

そして、大人の対応の一挙手一投足が、子どもの機嫌も、態度も、
そして育ちそのものに影響していくことは、
子育てをしているとひしひしと感じることですね。

なんだかわからないけれど、うまく「切り抜けられる」時があります。
反対に、うっかり「地雷」を踏んでしまったかのように、混乱を深めてしまい、
ますます子どもはぐずり泣き、癇癪を起こし、手がつけられなくなる時があります。

  

何が違うのでしょう?

ひとつ大きなヒントとして、
自分自身の体調が良かったり、気持ちに余裕がある時は、
なんだか即座に「良い対応」ができるということがあります。
逆に、イライラしていたり、悩み事があったり、焦っていたりすると、
状況は悪化していったりします。

目の前のことしか見えていない時、
人は選択の幅も狭まり「不安」から言葉と態度を選んでしまいます。
「そんなことすると、おやつあげないよ」
「もうお母さん、そんな子は知らないよ」
そんな否定的な言葉がつい出てきてしまいます。

自分がリラックスできて、余裕のある時は、
全体が見渡せます。
駄々をこねている子どもの体調や
ここ最近の心当たりなども視野に入れることができるので、
混乱している子どもを
温かな毛布で包んであげられるような対応
取ることができます。

これらは全て、とっさの対応=直感で動いていることがほとんどです。
ですから、親や教師、保育者など子どもと日々向かい合う人たちは
この「直感」を日々磨いていることがとっても大切になります。

しかし、直感って一体どうやって磨けば良いのでしょう。

実は先日、園主催の「直感コミュニケーション教育講座」がありました。
毎年ドイツから直感教育の第一人者である
トーマス・ペドローリ氏をお迎えしての学びの場です。
ここでは、毎回、大人たちがお腹を抱えて、涙を流すほど笑いながら
ひたすら遊び続けます。
ひとつの遊びは30分くらい、汗をびっしょりかくほど遊びこみます。
遊びは簡単なルールのある感覚を重視したゲーム(集団遊び)です。

遊んで、
遊んで、
遊んで、
そして静かに休んで。
遊んで、
遊んで、
また遊んで、
そしてシェアリング。

そういったことを2日間、みっちり繰り返していくと
不思議なことが起こるのです。

それは人によって違うのですが、
子ども時代の記憶から、自分の今の「心の癖」を解き放つ
インナーワークが始まったり、
仕事や育児で疲れ切っていた頭に創造性が戻ってきて、
新しいワクワクするアイデアが浮かんできたり、
人にどう見られるかを気にしてばかりいた自分が、
そんなことどうでもよくなって
自分のやりたいことに素直になれるようになったりするのです。

面白いですよね。
本を読んだり、人の話を聞いたりするだけでは起きない変化が、
我を忘れるほど遊び込むことで、
思いも掛けない深いところで変化していく。

そう、そんな風に自分の中の「ブロック」が取れた時に
「直感」のひらめきは、自分の中をスムーズに通って降りてくるのです。

つまり、子どもと一緒に過ごす大人は、
もっともっと遊び心を大切にすることが本当に大事だな、ということです!
しかも、本気になって我を忘れるほどに、です。

子どもとの暮らしに行き詰まったら、
思い切り自分も遊び込む、ということを大事にしてみると良いかもしれません。
粘土でも、お風呂で水遊びでも、
没頭できる頭を使わない手仕事でも良いでしょう。
時には、子どもと離れてみる時間を作る工夫も必要ですね。

現代人は、頭を使いすぎて、直感の通るパイプがつまり気味。
子育ての方法論はたくさんあるけれど、
方法論でうまくいっても、その場しのぎの対応になることがほとんど。
長い目で見て豊かな人間性を育てようとするときは、
自分という人間から湧き出る直感=クリエイティビティこそが、
真の豊かさを育みます。
子どもを育てるのに、方程式は要りません。

ー遊びをせんとや生れけん(梁塵秘抄)

遊んで、遊んで、私が私であるための、直感を閃(ひらめ)かせていきましょう。
秋はまさに、そんな季節です。

(この連載は毎月新月・満月の更新です。次回は9/29新月の更新です)


文・虹乃 美稀子(園長/担任)
仙台市の保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、
シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。
06年、園の前身となるシュタイナー親子クラス開設
08年、「東仙台シュタイナー虹のこども園」開園 

仙台・東京・岩手にてシュタイナー講座、子育て講座などを通年開催 

new! 19年8月「小さなおうちの12ヶ月」(河北新報出版センター)出版 

Facebook|東仙台シュタイナー虹のこども園
Instagram|@steiner_nijinokodomoen

 

ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
園長および幼稚園部担任他。
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、2000年に音楽発信ホーム「仙台ゆんた」を開き、アンプラグドのライブ企画など行う。
並行してシュタイナー幼児教育者養成コースに学び、南沢シュタイナー子ども園(東京都東久留米市)にて吉良創氏に師事。
08年仙台ゆんたに「虹のこども園」を開く。
民俗学とロックとにんじんを好む。1973年生まれ、射手座。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)