園では、食事の前に小さな歌に続けて、
こんなお祈りをします。
大地がこれらをもたらしました
太陽がそれを実らせました
愛する太陽 愛する大地
私たちは決して忘れません
開園当初から、教師が手作りしたものを
食べさせるということを徹底してきました。
親子で通う赤ちゃんクラスの離乳食的おやつから、
園のおやつや給食はもちろん、
小学生クラスの夕飯まで。
私たち教師は、保育者であると同時に
台所にも立ち続けてきました。
小学生クラスなどは「ゆんた食堂」と呼ぶ
この夕飯の時間がクラスの中核となっています。
一汁二菜が基本です。
シュタイナー教育を知った時、
シュタイナー幼稚園の教室には、
世界中ほぼどこでもキッチンが教室の中に備えてあり、
家庭と同じように、教師が子どもたちと一緒に
おやつや簡単な食事を作るというありようを知って、
感動しました。
同時に、自分が保育士や児童相談所の職員として働いた経験の中で、
大事にしたいと思ったことの核がここにあると、
確信したのを覚えています。
育てるということの基本は、
食べさせることにあり、
そのことに大人が「最低限の手間」をかけるということは
とても大切です。
最低限の手間、って?
との問いが生まれるかもしれませんが、
それは、人それぞれです。
それぞれであることが、
とても大事です。
子どもの食事に手間をかけることの、
自分にとっての「最低限」とは何か、
といったようなことを考えることは
「暮らしの中の哲学」と言えます。
正解はありません。
自分でそれを考えたり感じたりすることが、大事です。
そして、大人がそうした心持ちで
暮らしの何気ないことに問いを向ける姿勢は、
自ずと子どもの「感じる心」や「考える姿勢」を育てます。
それこそが、外側ではなく内側を育てる
本当の意味での「子育て」なのではないかと思うのです。
私は、食べることを思う時、いつも教室で毎日唱える
冒頭のお祈りを思います。
食べ物を育てる太陽や大地への感謝を
「私たちは決して忘れません」と食事のたびに宣言することは、
「私たちは、生きるために食べる」=「私たちは今日も生き抜く」
といういのちの基本姿勢を
そのつど確かめ合うことでもあります。
その「私」が中心となって、暮らしに問いを生み出し、
その答えを求めようとすることは
情報や知識ではない
自分の血や肉を通して生まれてくる野生的な哲学です。
子どもとともに暮らすことは、
こんな哲学が無限に生まれてくるような時間です。
「子育ては自分育て」と言われるのは、
きっとこういうことなのでしょう。
(この連載は毎月新月・満月の更新です。次回は1/25新月の更新です)
文・虹乃 美稀子(園長/担任) 公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、 シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。 南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。 06年、シュタイナー親子クラス開設 08年、「東仙台シュタイナー虹のこども園」開園 仙台・東京・岩手にてシュタイナー講座・子育て講座を通年開催 new! 19年8月「小さなおうちの12ヶ月」(河北新報出版センター)出版 Facebook|東仙台シュタイナー虹のこども園 Instagram|@steiner_nijinokodomoen |