いよいよ、卒園の春が近づいてきました。
この時期になると、年長の子どもたちは残り少ない園生活を肌で感じて、遊びにも力が入ります。
卒園制作として、5回の延長保育の中で「坊ちゃん人形」も作ります。
ネル地の布を茜で染めて、周りを縫って、羊毛を丸めて、紐で縛って頭と手を作る
人形の原型のようなシンプルな坊ちゃん。
この子達に一人ずつ名前をつけて、卒園の時に皆の前で発表して巣立っていきます。
もう6歳にもなってお人形遊びなんかするかしら。
男の子も作るの?
とお思いになるかもしれませんが、、、、
これが毎年、教師がその都度感心するほどに愛おしむのです。
普段人形遊びはしなくなった男の子も、です。
まるで生まれたばかりの赤ん坊を触るように、
そっと抱きしめたり触ったりします。
自分の手で、「人形」という自分の分身を一から時間をかけて生み出すことに
意味があるのです。
「時間をかけて」というところが大事です。
命は、時間をかけて育まれていくものです。
そして、「もう一つのお家」だった幼稚園から、
初めて巣立ち、「学校」というより大きな社会の中で歩み出す子どもたちにとって、
脱皮するように、自分の分身を生み出すような力を
このお人形作りは秘めています。
世間が過度に情報化し、なんでも「速いこと」が良いこととされ、
身体的にも「快」に感じられるようになりますと、
得てしてゆっくりしていること、遅れることは、
不安にも不快にも感じられてしまいます。
「這えば立て、立てば歩めの親心」と昔から言いますが、
子どもの成長は早いと安心、遅いと不安になるものなのは
今に限らない変わらぬ親の心情なのかもしれません。
しかし、「育つ」ということにおいて、
植物・動物問わず生き物には全て、相応の時間が必要です。
特に人間は一人前の大人になるまでにかなりの時間を要する、
生物の中ではかなり特殊なありようをしています。
その人間の年輪をゆっくりしっかりと太らせていく時間を、
ともに見守る大人が必要です。
年輪が太っていくのを、ただ一緒に見守ってくれているような存在。
そんな存在が親以外にもいるのなら、その子はとても幸せものです。
↓年輪の写真載せたかったのですがどうしても見つからず、、、
昨年秋の趣味の歴史クラブ活動で出かけた涌谷町の箟峯寺(こんぽうじ)の古杉さまです。
(この連載は毎月新月・満月の更新です。次回は3/10満月の更新です)
*春休みに、久しぶりに九州を回って講座をします。
大分ではリトリート合宿も。遠方からもご参加もいらっしゃいます。桜が一番美しい季節です。
ご参加をお待ちしています。
文・虹乃 美稀子(園長/担任) 公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、 シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。 南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。 06年、シュタイナー親子クラス開設 08年、「東仙台シュタイナー虹のこども園」開園 仙台・東京・岩手にてシュタイナー講座・子育て講座を通年開催 new! 19年8月「小さなおうちの12ヶ月」(河北新報出版センター)出版 Facebook|東仙台シュタイナー虹のこども園 Instagram|@steiner_nijinokodomoen |