新刊「いちばん大事な『子育て』の順番」発刊のご案内

小さな声が聞こえるところ45「言葉に頼らない子育て〜大事な3つのこと」

幼い子どもと接する時に大事にしていることは、
「言葉に頼らない」ということです。

大人は、子どもが話しだすとつい
「言葉でやりとりできるようになった」
とうれしいものですね。
赤ちゃん時代は、泣いたり不機嫌だったりしても、
その原因がわからずに途方に暮れることがよくありますが、
片言でも話せるようになってくれれば、
ぐんと理解が早くなった気持ちになります。
会話ができるようになると、
コミュニケーションが深まった気持ちになります。

でも、ここでちょっと気をつけましょう!
実は話し出した子どもたちの語る言葉は、
すっかり言葉を母国語として習得した大人の話す言葉とは、
全くその表現における重要度が違うのです。
話す言葉も、それを使う頭の働きも、表現している心の感情も、
「すべては大いなる発達の途上にあります」

途上にあるものとやりとりしている、という認識が非常に重要です。

気をつけるポイントを3つ挙げてみます。

1 言葉通りに受け取りすぎない

「イキタクナイ」「コッチガイイ」「〇〇キライ」「アレジャナキャダメ」
言葉通りに受け取って
「うちの子はこれが苦手なんです」
「これじゃないとダメなんです」
と決めつけてしまうことが多いですが、
幼い子どもは常に変化しており、
その多くは大人との関わりを求めるきっかけのサインにしているだけで、
大人の導きによって、大方は心地の良い方向へと着地することができます。

2 言葉がけは二の次である

保育の世界でも、子育てでも「言葉がけ」が非常に重要なポイントとして語られますが、
四半世紀子どもたちと関わってきて思うことは
 「言葉がけ」は二の次だな、ということです。

もちろん、どんな言葉を語りかけるか、はとっても大事です。
子どもには、具体的で、子どもの暮らしの体験範囲内で理解できる、
温かな言葉を使うことが必要です。

ただし、私たち現代人は非常に高度に情報化された社会の中で
過剰に言語コミュニケーションに偏ったやりとりをしていることを自覚しましょう。
それに慣れた頭のまま、幼い子どもとやりとりしようとすると
トンチンカンなやりとりになる可能性大です。

幼い子どもたちのコミュニケーションはもっと
その人の持っている「気配」や「気分」といった「気」を
スポンジのように吸い込む形で接しますから、
言葉以上に私たちがどんな気持ちで幼子の前に立っているのかがより大切です。

よく「なんかわからないけれど子どもに好かれやすい人」と
そうでない人がいると言いますが、
子どもの前で、言葉を使った思考で向かい合おうとする人は子どもは苦手です。
反対に、子どもの前で感覚を開くようにオープンで居られる人は
ただそこにいるだけで子どもは安心します。

優しい言葉や褒め言葉を連発するから、安心するのではないのです。

男の人が苦手という乳幼児が多いのは、
男性の方が思考で向かいあおうとする力が働きやすいからかもしれません。

3 「話すこと」より「感じること」を

挨拶がきちんとできる子どもに育てたいからと、
2〜3歳の子どもに何度も
「こんにちはって言えるよね」
「さようならは? 練習してきたよね??」
と一生懸命促すお母さん、多いです。
「お家ではできるんですが、、、すみません」と謝られたりして。

先生に失礼ないように、と思ってくださっているのかもしれませんが、
お子さんは大好きな場所に来た時には
その部屋の空気とそこにいる先生やお友達の空気をいっぱいに吸い込んで
しばし味わっています。
帰る時には、帰り難い気持ち、今日も楽しかったという満足した気持ちの中で
夢見るような心地でいます。

もう少し成長して5歳くらいになれば
場面の切り替えに心と体がついていくようになり
「こんにちは」も「さようなら」も言えるようになりますが、
その前の時代は、夢見心地の子どもを無理に覚醒させて
「言えるようになったから言わせる」ということを無理にしなくてもいいのです。

それよりも、大人同士が心を込めて挨拶しあっている姿を
見せている方がよほど大事です。
挨拶という「形」を早く子どもに仕込もうとするより
挨拶の「本質」を手本として見せていれば
自ずと子どもは真似するようになります。

ここまで、3つのポイントを挙げてみました。
大事なことは繰り返しになりますが、

大いなる発達の途上にあるものとやりとりしている、という認識です。

そして、この発達の途上にあるということは、
私たちもかつてすべての人間が通ってきた、
この地上でかけがえなく尊く美しい道の上なのです。

(この連載は毎月満月・新月の更新です。次回は6/6満月の更新です。)


文・虹乃 美稀子(園長/担任)
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、
シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。
06年、シュタイナー親子クラス開設
08年、「東仙台シュタイナー虹のこども園」開園   
仙台・東京・岩手にてシュタイナー講座・子育て講座を通年開催
著書「小さなおうちの12ヶ月」(河北新報出版センター)

Facebook|東仙台シュタイナー虹のこども園
Instagram|@steiner_nijinokodomoen

 

ABOUT

虹乃美稀子
虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。

2008年「東仙台シュタイナー虹のこども園」を開園。幼稚園部を中心に、未就園児親子クラスから小学生クラスまで、12年間にわたる子どもの成長を見守る草の根の教育機関として運営。
東京をはじめ、全国各地でシュタイナー講座・子育て講座を開催。

著書
「小さなおうちの12ヶ月」(河北新報出版センター)
「いちばん大事な子育ての順番」(青春出版社)