小さな声が聞こえるところ59「健全に刺激的な大人の遊びの提案」

仙台も初雪が降り、いよいよクリスマスが近づいてきました。
毎日生誕劇が静かに盛り上がり、子どもたちは自由遊びでも遊び布を身にまとって衣装にし、劇ごっこを始めています。
やんちゃな男の子たちも、マリア役に憧れる今年。
最初に演じた年長の男の子の演技が素晴らしかったからでしょう。
年中の男の子たちが、「マリア役になれるのはいつかなあ」とお家でつぶやいているそうです。

週ごとに、教室に灯すろうそくの灯も増えていきます。
そしていよいよ今週末は、クリスマス会。
お母さんたちをお招きして、劇を見てもらい、みんなでお祝いのクリスマス・クッキーをいただきます。

このクッキーはクリスマス前に、子どもたちと2日がかりで作ります。
クリスマスには、普段使うことのないカルダモンやクローブ、シナモンといったスパイスを使います。かつてスパイスが大変高価だった時代、一年で一番のお祝いであるクリスマスにふんだんに使うこと、そして保存を効かせるという意味もあったようです。

虹のこども園のクリスマスクッキーは、かつて私が実習させていただいた園のレシピをアレンジしたもので、潰したバナナが入っています。
これがこっくりとしたコクを生み出してとてもおいしいのです。
よくお母さん方にレシピを聞かれます。過去の園だよりにレシピ掲載していますので、よかったらご覧くださいね。
バナナは、しっかり熟して皮が黒くなった食べごろ過ぎたものを、冷凍保存しておき使うのも便利です。

子どもたちと「型抜き」のクッキー作りをするのも、年に1度のこの時だけ。
普段のクッキーは土だんごを作るように、手でゴロゴロと丸めたり、それを平べったく潰したりした、素朴な形のものばかり。
いわゆる「カントリー・クッキー」と呼ばれるものですね。
こちらの方が、触覚体験は豊かで、「型抜き」の作業ほど「知的」な作業ではありません。

「型抜きの作業は幼児にはちょっと知的すぎるんですよ」とお話しすると、大抵のお母さんはびっくりされます。
子どもたちとするクッキー作り、とても楽しいですよね!
しかも「型抜き」するのが、子どももいちばん大好きなのに!

はい、本当にその通りです。笑

でも、子どもたちと長年一緒に暮らしていると、
子どもたちと普段一緒に作るときは「カントリークッキー」の方がふさわしいんだなあ、と感じるのでした。
実感からの理解、です。

「へ〜」と関心を持たれた方は、ぜひ型抜きクッキーとカントリークッキー作りの違いを、自分の感覚体験を味わいながら体験してみてください。
頭ばかり使って、デジタルの偏重した感覚刺激ばかりを受け過ぎがちな現代。
こうした「自分が能動的に」世界と関わろうとするような「遊び」は、大人にとって健全に刺激的です。

(この連載は毎月満月・新月の更新です。次回は12/30満月の更新です。)

ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
園長および幼稚園部担任他。
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、2000年に音楽発信ホーム「仙台ゆんた」を開き、アンプラグドのライブ企画など行う。
並行してシュタイナー幼児教育者養成コースに学び、南沢シュタイナー子ども園(東京都東久留米市)にて吉良創氏に師事。
08年仙台ゆんたに「虹のこども園」を開く。
民俗学とロックとにんじんを好む。1973年生まれ、射手座。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)