新刊「いちばん大事な『子育て』の順番」発刊のご案内

小さな声が聞こえるところ6「私も通いたかったなあ」

 親子クラスや幼稚園部に通い始めて、一番多く聞こえてくる保護者さんの言葉は「私もこんな幼稚園に通ってみたかったなあ」という言葉です。
きっと、シュタイナー教育に触れた大人の多くの心の声なのではと思います。

先日、私が年に一度非常勤講師を務めている大学の学生が、立て続けに園の見学にやってきました。
その大学は工業大学なので(「子育てとコミュニティ」という内容の講義を担当しています)保育の仕事を志している学生たちではないのですが、男女関わらず私の講義を聞いて、どんな園なのか興味を持ったというのです。

私はどの学生でも最初から保育見学をしてもらうのではなく、まずは保育後の時間にゆっくりと面談をすることから始めるのですが、そうすると学生たちが必ず言うセリフは、お母さん方のそれと同じなのです。
「あ〜こんな幼稚園に通いたかったな〜」
「ここにいると、ずっと遊べる気がする」
「スマホとかいらなくなるね」(なんとうれしい言葉!)

そう、キャラクターに溢れたような子どもだましではない、本質的な美しさや自由な発想を大切にする環境は、子どもだけではなく大人のクリエイティビティも刺激するのですね。
そしてそれは、生命力を活性化させることにも繋がります。

子どもにとって健康的な望ましい暮らしの環境は、大人にとっても健やかさを保つ助けとなってくれるのです。
私は園での子どもたちとの暮らしの中で、それをとても実感しています。
 

美しい教室の設えや、素朴で美味しい手作りのご飯。
想像力を全開にしてごっこ遊びに没頭できる室内環境。
決して「評価」を求められない様々な芸術活動。
のびのびと時間を忘れて野山を駆け巡ったり泥んこになる時間。
そして何よりも、
ひとりひとりの本質を尊ぶ、大人に尊重されていると感じられる関わり。

これらは本来、大人の私たちにとっても大切なことですね。
これからの時代の幼稚園は、子どもと一緒に大人も学びを深め、素敵なことを共に体験しながら、人間の健やかで豊かな暮らしを深める助けになるような場でありたいと思っています。

人間の成長にとって、乳幼児期の教育ほど大切なものはありません。
本人はおよそ記憶の無い時代なので、その教育がどれほど自分に関与したのかは気づかないことがほとんどですが、だからこそとても大切なのです。
何故なら記憶がないということは、その影響が無意識の領域に関与しているということだからです。

園では今年度より「お母さんもシュタイナー幼稚園へ!」というプログラムを始めています。
季節のライゲン(担任の歌や言葉で導かれるお遊戯の一種)を一緒に踊ったり、毎週火曜日のにじみ絵(シュタイナー芸術療法の水彩画)を子どもたちと一緒に描いたりできます。
帰りのお集りの時間に、季節ごとに上演される人形劇を一緒に鑑賞したりもします。

我が子が包まれている温かな覆いの感覚にともに包まれることで、幼児にとって大切なことは何かを感覚で理解することのきっかけになってもらえたら、という思いがあります。

それと同時に、私たち現代人が失いかけている大切なことは、きっと幼い子どもの暮らしを守ろうとすることで、実は取り戻すことができることが多くのあるのではと思うのです。

幼稚園は世界の未来を生み出す場所ーそんな思いで、日々の保育を紡いでいます。

(この連載は、毎月新月・満月に更新されます。次回は11/8新月の更新です。)

文・虹乃 美稀子(園長兼クラス担任)
仙台市保育士として7年間勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ
08年「虹のこども園」開園 
仙台、東京、岩手にてシュタイナー講座を通年開催 
 Facebook|虹乃美稀子
Instagram|mikikonijino
Twitter|@nijinomikiko

 

ABOUT

虹乃美稀子
虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。

2008年「東仙台シュタイナー虹のこども園」を開園。幼稚園部を中心に、未就園児親子クラスから小学生クラスまで、12年間にわたる子どもの成長を見守る草の根の教育機関として運営。
東京をはじめ、全国各地でシュタイナー講座・子育て講座を開催。

著書
「小さなおうちの12ヶ月」(河北新報出版センター)
「いちばん大事な子育ての順番」(青春出版社)