小さな声が聞こえるところ68「”おにわのはなれ”ができました」

 やったー! とうとう出来上がりました、園庭のウッドデッキを改造した小屋。春休み中に、用務員係の大工さんが頑張ってくださいました。
もともと、メインの教室しかない園なので「小さくてももう一つの離れたお部屋が欲しい」という切なる願いから生まれたアイデアでした。
保育の中で個別の時間や配慮を必要とするとき、保育後のお預かり保育のとき、保護者さんとの面談や保護者会活動の休憩などにと、用途はたくさんあります。

ウッドデッキはもともと、震災後にこの敷地が空き地となり園庭として使い始めた時に、友人たちが建ててくれたものですが、そこに「半分くらい壁を作って小屋にならないかな?」という私の全くの素人考えから始まりました。
腕利きの大工さんがいてくれるから実現した話ですが、出来あがってみればそれは「小屋」と呼ぶよりも「小さなお家」と呼びたいくらいかわいらしい部屋が出来上がりました。

「想像以上のものが出来上がってる」と大工さん。
窓は昭和のアンティークの磨りガラス、扉は手作りでまるで童話に出てくる山小屋のよう、壁は私の希望で漆喰の白と赤茶を混ぜて薄いピンク色を作り塗ってもらいました。
(ここだけちょっと自分でもやらせてもらいました)

子どもたちの外でのままごとの貴重な遊び場だったウッドデッキの半分を使ってしまったので、ウッドデッキ部分を延長しましたが、剥がした床材を張り直してくださったので、目に慣れた古い部材が新しく増築したところに使われていることで、なんだか「ウッドデッキが拡張した」ような不思議な感覚です。

子どもたちは大喜びです。
ウッドデッキがこんな風に改造されたのを見るのは、とても驚きでしょう。
人間の素朴で熱のこもった手の技があちこちに埋められているようなこうした建物が目にできるのは、とても教育的だと思います。

ここは「おにわのはなれ」と名付けました。
敷地にある母屋から離れた別宅は「離れ」と呼ばれ、昭和の時代までは日本の住宅によくみられたものですが、核家族化、生活スタイルの変化によりそうしたものは今ではあまり見られなくなりました。
「おにわのはなれ」が出来上がってみると、こんなに小さな敷地の園でも、生活空間に広がりと膨らみが生まれ、園庭も面積的には建物が増えた分だけ狭くなったはずなのに、なぜかより広がりを感じるようになるのだから不思議です。

子どもたちは、このはなれのお部屋をすっかり気に入っています。
園はこの春に14歳を迎えました。
シュタイナーの7年周期の話で行くと、いよいよ第3七年期に入るわけです。
こうした節目にこんな素敵な新たな空間を内包することができて、とてもありがたく、ここまで支えてくださったみなさんに感謝の気持ちでいっぱいです。
今年も、子どもたちとの暮らしが充実して、豊かになっていくよう、日々を重ねていきたいです。

(この連載は毎月満月・新月の更新です。次回は5/12新月の更新です。)

ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
園長および幼稚園部担任他。
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、2000年に音楽発信ホーム「仙台ゆんた」を開き、アンプラグドのライブ企画など行う。
並行してシュタイナー幼児教育者養成コースに学び、南沢シュタイナー子ども園(東京都東久留米市)にて吉良創氏に師事。
08年仙台ゆんたに「虹のこども園」を開く。
民俗学とロックとにんじんを好む。1973年生まれ、射手座。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)