小さな声が聞こえるところ72「小さな園庭」

今年の夏至は、1歳児親子クラスひこばえ組の日でした。

この年齢のクラスは、お母さんがごく簡単な手仕事(今年は手織物に取り組んでいます)をしているかたわらで子どもたちはおもいおもいに遊びます。少しずつお母さんから離れられるようになると、教師と一緒に遊んだり、お台所で一緒におやつの準備をしたりもできるようになります。

夏至の月曜日、おやつの後にみんなで園庭に出ました。
お庭遊びの時間があるのは2歳児クラスからなのですが、この日はせっかく夏至なので、みんなでお庭に出て、たわわに実ったラズベリーを摘もうということになったのです。

子どもたちには、紙コップにモールで取っ手をつけた「ラズベリーバスケット」を一つずつ渡しました。1歳児さんたち、お庭に出ると一目散に、真っ赤に実ったラズベリーの木々によちよちと走り寄っていきます。

今年はラズベリーの実の成りが、例年より立派です。そしてとてもたわわです。
初めてラズベリーを見る子も、一粒口の中に入れてあげると、その美味しさに目をまんまるくして、どんどん摘もうと手を出します。面白くて仕方ないようで、まだ言葉がそんなに出ていない子も「オオッ」「ウゥー!」と感嘆の声を喉の奥から絞り出す喜びようです。

あっという間に紙コップのバスケットはいっぱいに成りました。その真っ赤な実が山盛りになっているバスケットがうれしくて、ついブルンブルンと振ってしまい、辺りに飛び散ってしまうラズベリー。それを苦笑しながら何度も拾い上げるお母さん。微笑ましいやりとりです。

園のお庭はとても小さいのですが、その中に畑も砂場も花壇も生ゴミを土に返すコンポストも、そして春にできたばかりの「はなれ」の小屋もあります。

見上げれば幹線道路があり、車もビュンビュン通っているのですが、お庭って不思議ですね。車の音は確かにうるさいのに、お庭の守られた空気が静かな世界観を生み出しています。
「メルヘンの世界にいるみたいですね」とお母さん方に言われるくらい、別世界なのです。

仙台もマンションやアパート住まいの子が多く、お庭を持たない家庭も増えました。でも、お庭という「土のある場所」は、たとえ猫の額ように小さくても、公園や公共施設の広場にはない、プライベートで安心して大地と繋がることのできる場所になります。
どんどんアスファルトやコンクリートで覆われていく地面ですが、「土のある場所」をみんなで大事にしていきたいですね。

土から生命は生まれ、そして土に還っていく。
この大地こそが、私たちの家。そんな先住民的な感覚を、現代社会に生きる子どもたちにこそ、伝えていきたいのです。夏至に寄せて。

(この連載は毎月満月・新月の更新です。次回は7/10新月の更新です。)

ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。

2008年「東仙台シュタイナー虹のこども園」を開園。幼稚園部を中心に、未就園児親子クラスから小学生クラスまで、12年間にわたる子どもの成長を見守る草の根の教育機関として運営。
東京をはじめ、全国各地でシュタイナー講座・子育て講座を開催。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)