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小さな声が聞こえるところ85「笑門来福〜子どもとメディア」

 
明けましておめでとうございます。

2022年のお正月、いかがおすごしでしょうか。

私はコロナが落ち着いている隙間で、2年ぶりに帰省した妹家族を実家に迎え、

久しぶりに家族時間をとっぷりと過ごしました。

妹家族には5歳の甥と8歳になる姪がいますので、帰ってくるとそれはとても賑やかです。
ずっと実家にいるのも退屈になってしまうので、今年は元旦から園の教室(私の自宅の1階になります)でプライベート保育でした。

姪は、幼稚園の年少児時代に虹のこども園にも通っていたことがあるので、
目にするものあれこれが懐かしいようで、没頭して遊んでいました。
甥も姪も、創造力を駆使して遊びを展開することが大好きです。
園のおもちゃは、木の実や布、よく磨き上げた木片のような積み木など自然物ばかりですが、
それらをいろいろなものに見立てて、遊び込んでいく様子は園の子どもたちと変わりません。
時間を忘れて、時に喧嘩をしながらも、遊びは続いていきます。

でも、おじいちゃん、おばあちゃんのいる実家に戻り、居間にテレビがついていると、すっかり様子が変わります。
テレビの前で微動だにせずに、見入ってしまいます。
まるで「魂のスイッチオフ」状態です。
番組の内容はあまり関係なく、とにかく画面に見入ってしまうのです。

普段彼らの家庭にテレビが無いから珍しいこともあるのかもしれませんが、
大人の話しかけにも応じなくなり、ご飯だよと声をかけても動けなくなり、テレビを消そうとすると怒り出します。
スクリーンの威力はすごいなと改めて思いました。

そういえば、大晦日の新聞に「スマホ持つ子 抑うつ傾向」という見出しの記事がありました。
弘前大医学部の研究調査によると、コロナ感染拡大時期に、スマホを持つ子どもは持たない子どもに比べ、気分の落ち込みや意欲減退、食欲減少、寝つきが悪いといった抑うつ症状が強い傾向にあったそうです。

スマホ依存の親は子どものケアをおろそかにしがちで(それは親御さんもそのことに無自覚の状態が多いと思います)、家庭機能の低下が抑うつを招くと考えられるとの調査した教授のコメントもありました。

子どもたちがテレビを見ているときは、大人はここぞとばかりにスマホをいじらずに、
一緒にテレビを見ましょう。
「一緒に」というところが、大事だなと思いました。
そして、テレビのリモコンは大人が主導権を握りましょう。
動画も見る、やめる、のタイミングは大人が責任を持ちましょう。
子どもを幼い頃からメディアの海に投げ出してはいけません。
溺れます。

幼い子どもたちだけで海水浴をさせて、放置している大人はいないと思います。
それと同じように、今、私たちの暮らしの中には、気づかぬうちに監視台も救助隊もいない、
メディアの海が漫然と広がっている状況になっており、
大人も知らず知らず溺れて、自分を見失いがちな状況なのです。

夕飯を食べ終えて、またテレビのリモコンに手が伸びる甥っ子を誘って、
カレンダーの裏紙に即席で福笑いを作りました。
眉毛に目、鼻、口とクレヨンで大きく描いたものを切り取らせて、
手ぬぐいで目隠しをして、子どもも大人もかわりばんこに挑戦。
しばらく家族で大笑いしました。

人間の尊厳が、知らず知らず見えないものに搾取されていきそうな時代です。
そこを守り通すのは、遊ぼうという創造性や、ユーモアを大事にしようとという、
日々の心のゆとりなのかもしれません。

笑う門には福来たる。
今年も大事にしていきたいと思います。

 
 
(この連載は毎月満月・新月の更新です。次回は1/18満月の更新です。)

ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。

2008年「東仙台シュタイナー虹のこども園」を開園。幼稚園部を中心に、未就園児親子クラスから小学生クラスまで、12年間にわたる子どもの成長を見守る草の根の教育機関として運営。
東京をはじめ、全国各地でシュタイナー講座・子育て講座を開催。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)