小さな声が聞こえるところ13「小鳥のさえずりのような歌」

シュタイナー幼稚園で歌われている歌を耳にしたことのある方は、それが現在一般的に歌われているいわゆる「こどものうた」と雰囲気や趣が違うことに気づかれることがあるかもしれません。

保育の世界にも流行があり、その時々で全国的によく歌われる人気のこどものうたがあります。
ここ20~30年ほどの間にその傾向はより大人の流行歌に近づいてきて、
リズムが複雑であったり、半音が多用された複雑なメロディーであったり、
また感情がまだ十分に目覚めていない子どもの早熟を促すように感じられる、
センチメンタルな歌詞が見受けられたりします。

まだ自我意識にしっかりと目覚める前の幼児のありようは、
世界と自分を分け隔てなく一体化して感じられるような意識状態です。
「7歳までは夢の中」という言葉は、そうした幼児の意識状態を表しています。

園では毎日、歌をうたって暮らしていますがそこで歌われる歌は、
5度の音階(ペンタトニック)と言われる非常にシンプルな長調でも単調でもないメロディー、
自意識を刺激しない、いわゆる感情の領域に働きかけない歌詞
ふんわりとどこか空の上から降ってくるような小さな歌の数々です。

教師たちは、感情を込めずに小鳥のさえずりのように軽く響くように歌うことを心がけています。
感情は重さでもあります。
まだ自我がしっかりと芽生える前の感情が未分化な子どもたちにとって、
大人が感情を込めすぎているものは歌にしても語りにしても「重い」のです。
「想い」は「重い」のですね。

そしてまた、小さな子どもたちの前ではスピーカーから流れる機械の音よりも、
人の身体から響く生の声が一番大切です。

「音痴なので、、、」とか「こどもの歌をよく知らなくて、、、」とおっしゃるお母さんは多いですが、
どんなに上手な童謡歌手が歌うCDをかけているよりも、
お母さんが鼻うたを口ずさんでいるリビングの方が、子どもたちは居心地が良いものです。

昔ながらの誰しもが知っているような歌はきっと
思い出すうちに記憶の片隅から湧き出てくることと思います。
たくさんの歌を知らなくたっていいのです。
同じ歌を何度も繰り返して歌う方が、日替わりでいろんな歌を歌うより子どもたちの心に染み込みます。

時には目にした風景をごく簡単な言葉にして、
そこに単純なメロディーをつけて新しい我が家だけの歌を作ることもできるかもしれません。

私たちの遠い先祖は、言葉を話し出す前に、歌い始めていたのではないかしら、そんな気がしてなりません。
人間としての歩みを始めたばかりの小さな子どもたちのそばにはいつも、
小鳥のさえずりのような歌があってほしいと思います。

(この連載は、毎月新月・満月に更新されます。次回は2/20満月の更新です。)

文・虹乃 美稀子(園長兼クラス担任)

仙台市保育士として7年間勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事

06年 園の前身となるシュタイナー親子クラス開設
08年 「東仙台シュタイナー虹のこども園」開園 
仙台、東京、岩手にてシュタイナー講座を通年開催 

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