小さな声が聞こえるところ2「おばあちゃんちに集うように」

今年も、夏休みの小学生合宿(通称ピリカキャンプ)を無事に終えました。
卒園児や親子クラスに通っていた子どもたちのうち、小学2年生から6年生までが参加するこの合宿は、今年で4年目になります。赤ちゃんから知っている子どもたちも多いので、再会が互いにとても楽しみ。
県外から駆けつける子もいます。

毎年、長く園の保護者として通って下さったミュージシャンの早健hayakenさんに音楽講師をお願いし、手作り楽器を二日間に渡って作るワークショップがメイン活動。
早健さん、いつも頭を悩ませつつ斬新なアイデアで子どもたちをワクワクさせてくれるのですが、今年はなんと、エアコンの廃材である銅管を使ったウインドウチャイム作り。
私はそもそも、エアコンの中にこんな立派な銅管が潜んでいることも知りませんでした。

長〜い銅管を早健さんの持ち込んだ特別の道具でねじり切る体験から始まります。
金属を切る、という体験そのものが珍しいですよね。
木材に穴を開け、糸を通して自分の好みのサイズに切った銅管を3本吊るします。
それだけで、揺らすとびっくりするほど良い音が。
木材に思い思いにカラー羊毛を巻きつけてデコレーションし、仕上げました。

ひとりひとりの作品ができた後は、早健先生の提案で一人ずつ好きなサイズに切った銅管を並べて13本、大きなチャイムも作りました。自分の銅管を吊るして、名前を書き入れていきます。
選ぶ銅管の太さや長さも、それぞれの個性が見えて楽しいもの。

翌日、出来上がったウインドウチャイムを片手にみんなで近くの大きな公園へ。
そこで出会った枝のよく広がった樹に、それぞれのチャイムを吊るしました。
「自然の音とセッションしよう」と早健先生。
みんなでしばらく、おしゃべりをやめて、それぞれのチャイムを揺らしながら、賑やかな鳥の声や吹く風の声と一緒に耳をすましました。
美しいひと時でした。

毎年、合宿の流れはだいたい同じで、楽器作りをして、カレーの夕食を食べて、青麻神社近くの森にある沢乙温泉に入ります。(ここは坂上田村麻呂が見つけたと言われる古い鉱泉です。そんな場所は東北には多いのですが、この辺りもまた蝦夷の里のあった古い土地の名残があります。)

帰ってきたら、公園で花火遊び。
都会では花火を自由に楽しめるスペースも少なくなってきているとか。
ろうそくの炎のどの辺りに花火を近づけると着火しやすいとか、ろうそくの火が消えても、ほかの子の花火から貰い火をするとか、些細なことですが火を扱う経験が全くないとそんなことすら分からないものです。
焚き火もそうですが、子ども時代から火に親しむことはとても大事なことだと思います。

夜は寝袋で寝ます。その前に、いつも私が素話の昔話を一つ。今年は宮城の昔話から「お化け寺」をしました。
そしたら初参加の2年生の女の子が、私も面白い小話を披露したいと。
お兄ちゃんが発案したという小話を、みんなの前で発表してくれました。それはそれは笑えました。
それにしても2回聞いただけで暗記して話せる子どもの記憶力は驚きです。
興奮してなかなか眠りにつけない子もいるのですが、夏休みですもの、あまり早く寝なさいと口うるさく言わずに見守ります。
テレビもゲームも無い一夜。
久々に会った仲間とおしゃべりに熱中する子、障子に移る木の陰をお化けに見立ててはしゃぐ子、寝袋の中で他愛もないダジャレを言い続ける子、、、
翌朝は、誰の寝相がひどかったか、そんなことで盛り上がります。

この合宿は、ひと昔前の親戚の子どもたちがおばあちゃんちに集まるような空気を大切にしています。
毎年、同じような顔ぶれで、同じようなメニューのご飯を食べて、同じようなことで遊ぶ。
それは実は、知的な情報が溢れ、頭への刺激ばかりが多い教育状況の中で、血肉に働きかけるつながりの体験を重視していることでもあります。
転勤族だったり、一人っ子だったり、土地や血縁といった「つながり」も薄くなりがちな子が多い現代です。
学校ともまた違う、長く付き合える関係性が確かにある、ということを体験を重ねて確信していってほしいのです。
それはきっと、何かしんどいことがあったときに足腰強く踏ん張れる「生き抜く意志」を支えるような、見えない力になってくれるのではと願うのです。

(この連載は、毎月新月・満月に更新されます。次回は9/10新月の更新です。)

文・虹乃 美稀子(園長兼クラス担任)
仙台市保育士として7年間勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ
08年「虹のこども園」開園 
仙台、東京、岩手にてシュタイナー講座を通年開催   

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