小さな声が聞こえるところ32「長い目で見れば大抵のことは心配ない」

保育所に勤めていた頃は、一年で担任が変わることは当たり前だと思っていました。
しかし、今の園は縦割り定員15名の1クラスのみの園ですから、入園から卒園まで一貫して私が担任をしています。助手も含めて、辞めない限りは保育者もずっと同じメンバーです。

長い子は、赤ちゃんの時から親子クラスで通い始め、小学生クラスにも通い切ると、およそ12年間の成長を見守ることになります。12年も付き合うと、人間の成長が長いスパンで見渡せますので、大抵のことは心配ない、ということがわかってきます。
その時々で親や教師が不安や心配に思うことのほとんどは、その子の大切な成長の節目であることが振り返るとよくわかるのです。
一年ごとの短い担任期間だと、そうしたことがわかりにくく、その場の問題行動をついその子自身の育ちの問題だと解釈してしまうことがあります。
また、数年にわたってその子の成長に付き合うので、保育者の責任感も、そして保護者さんとの信頼関係も自ずと深まっていきます。

現代では、昔のように近所の人たちが互いにそれぞれの子ども時代を知り合う仲ではなくなりました。
今、あなたの周囲にはあなたの子ども時代を知っている人がどのくらいいるでしょうか。
家族や親戚も、遠い別の場所に住むことが当たり前になってしまいましたが、
これは日本の歴史の中でも非常に大きな社会的変化です。
互いの子ども時代を知ることのない社会であり、その人の一生を見届けるような付き合いはほぼ消滅してしまいました。

 子どもたちにとって、記憶が芽生える前からの自分を知っている大人が近くにいるというのは、そこに故郷を感じるくらいの特別なものがあるようです。
仙台は転勤族の街でもあるので、遠くに引っ越してしまう子も少なくないのですが、中学生になった今でも、毎年飛行機に乗って会いに来てくれる子もいます。
受験生になった我が子につい小言が多くなってしまうお母さんに、そんなに追い詰めないであげてねとさらりと言えてしまうのも、長い付き合いがあるからこそです。
短い付き合いは遠慮がちになりやすい。
子どもにとって、長く付き合える大人がいることは育ちの中で掛け替えのない宝になります。
長ーく付き合ってみていると、大抵のことは心配ない。そんな目で見守ってくれる長い物差しを持った人がそばにいてくれたら、大人も子どもも安心です。
人間性の基盤を育てる乳幼児期に、一貫してずっとその育ちに寄り添う大人の存在が両親以外にいることの重要さについて、理解が広がっていってほしいと思います。

(この連載は毎月新月・満月の更新です。次回は11/27新月の更新です)


文・虹乃 美稀子(園長/担任)
仙台市の保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、
シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。
06年、園の前身となるシュタイナー親子クラス開設
08年、「東仙台シュタイナー虹のこども園」開園   
仙台・東京・岩手にてシュタイナー講座・子育て講座を通年開催 
new! 19年8月「小さなおうちの12ヶ月」(河北新報出版センター)出版 

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