小さな声が聞こえるところ47「お父さんの変化とエール」

虹のこども園を開いて、13年目。
「十年一昔」という言葉がありますが、情報化の著しい現代では、
ひょっとしたら「一昔」どころか「二昔」になるほどの倍速で
世の中は変化しているのではと感じます。

十年前は、誰もがスマホなんてまだ持っていませんでしたし、
震災も原発事故もまだ起こる前で、
コロナウイルスなんてパンデミックも未経験でした。
この十年の中での世界的な変化は著しく、
こうした加速する変化の中で、子どもの成長を見守り育てていることの
責任をいつも強く感じています。

人間は適応度の著しく高い生物ですから、
人類史上かつてないほどのスピードで社会が変化していっても、
無自覚にそこに適応・変化していくものですが、
それは言ってみれば「無意識」の動物的反応なので、
自覚がないとただ「流されるように」適応・変化して、
気づけば集団で崖下に落ちているかもしれません。

精神性を伴わずに進化する科学は大変危険で、
人間の手に負えない事態を引き起こします。
たった1回の地震と津波が引き起こした原発事故で、
先祖伝来の土地を半永久的に追われ、
被曝の危険のために、救助されることなく亡くなっていった
福島県沿岸の方々の痛ましさ。
この十年以内のうちに私たちが経験した、
人類史上に残る凄まじい様々な出来事に、
私たちはひとりひとりの中で、小さくとも「自覚的に」
受け止め変化していく必要があるのではと感じます。

園を続けている中で、そうした「小さな個人レベルの変化」を感じることの一つに
「お父さん方の子育てへの意識変化」があります。
ここ2〜3年で、気づけばご夫婦で園の見学や問い合わせに来られる方が、
ぐんと増えました。
本科の幼稚園部だけではありません。
予科の親子クラス(0・1・2歳児が親子で通うクラス)の入会などは、
以前はほぼ100%、お母さんが見学に来られて、
申し込みされて、お子さんと通われる、というケースでしたが、
今では、そうした未就園児のクラスでさえ、ご両親で見学に来られ、
ご夫婦で相談して決められて、時にはお父さんが参加される、ということが
増えています。
そして、お父さん方は大抵、たくさんのお母さん方や子どもたちと一緒に園で
手仕事をしたり、おやつを食べたり、お庭で過ごされることを楽しまれて
「また参加したい」とお家で話されているそうです。

なんだかとても、うれしい変化です。
お父さん方も、この大きな時代の変化の中できっと
「子どもたちをしっかり育てていくことの大切さ」を
本能的に感じ取られているのではと思います。
そして、それが自覚的な行動となって、
我が子の育つ教育的環境や必要な配慮について
学んだり、知ろうとされる方が増えているのでしょう。

メディアでは、欧米に比べてまだまだ日本のお父さんは
家事を手伝わないとか、育児に無関心などと報道されたりしていますが、
そんなことはありません。
変化は水面下で起き始めています。
子育ての根っこを見ている現場から、自信を持ってお伝えします!

日本のお父さん方も、どんどん変わってきてらっしゃいます。
「子どもをしっかり育てることの大切さ」
そして、その「しっかり」とは「本質的にどういうことなのか?」について
関心を寄せられる方が増えています。

子育てのあり方は、その国の民意と文化度の表れであり、
そのままその形成に直結しています。
だから、「子どもは国の宝」なのです。

今日は夏至。
太陽が一年で一番高みにのぼる光に満ちた日であり、
そして、新月です。
混乱の続く社会状況の中で、ひとりひとりが「自覚的に」生きることを
天体から促されているような今、
この世界を大地の根っこから支えてくれている世界中のお父さん方に
心からのエールを送ります。

お父さん、いつもありがとうございます。
父の日に寄せて。

 (この連載は毎月満月・新月の更新です。次回は7/5満月の更新です。)


文・虹乃 美稀子(園長/担任)
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、
シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。
06年、シュタイナー親子クラス開設
08年、「東仙台シュタイナー虹のこども園」開園   
仙台・東京・岩手にてシュタイナー講座・子育て講座を通年開催
著書「小さなおうちの12ヶ月」(河北新報出版センター)

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