虹のこども園では、毎日たっぷり自由遊びをした後にお片付けをすると、「ライゲン」の時間があります。
「ライゲン」とは一般の保育現場でも聞きなれない言葉だと思います。
「ライゲンてなんですか?」と聞かれると、一言で説明するのが難しい。
「シュタイナー園で毎日繰り返して行われる、動きを伴った芸術活動。」などと解説されたりしますが、私は簡単にいうと「シュタイナー園のお遊戯です」と答えています。
異論もあるかもしれませんが、国語辞典にも「お遊戯(おゆうぎ)とは、幼稚園、保育園で行われる、ある程度の長さを持った、体を動かす遊びのこと」とあるので、表現として間違ってはいないかと思います。
「ライゲン」の語源には、ギリシャ語でリング、輪、輪舞、という意味があります。
ライゲンはきっと世界中のシュタイナー園で日々踊られていると思いますが、何か知られた作品、共通の作品があるのではなくて、その多くは担任がクラスの子どもたちのために作ったもの、それがその園や他の教師に引き継がれて踊られているものなどのオリジナルです。
大人が先立って動き、子どもが模倣して同時に動くのが特徴です。子どもたちがその動きを覚えて踊るダンスのようなものではありません。
語源の輪舞とは違って、実際には大人を取り囲むようにして「ブドウの房のように」自然と連なって動いています。
シュタイナー園は全て音も声も生音(アンプラグド)であることを大事にしていますので、このお遊戯もCDなどをかけて踊ることはありません。すべては、担任の歌と言葉で展開していきます。
題材としては、季節の自然界の動植物や行事にまつわること、そして生活の動作をよく観察し、芸術的に再現したものが取り上げられます。
例えば、この時期なら私の園では「筍ほり」や「田植え」を踊ります。
筍を掘ったり、田植えをしたことのない子どもでも、そうした動きをライゲンの中で行うことで、将来行う様々な体を使った仕事の大元の動きを、親しみを持って体で覚えられるという意味もあります。
機械化された現代生活においては、有意味のある身体動作を経験することが少なくなっています。ライゲンを通して刃物を扱う、石臼を引く、パンをこねる、など経験のない動作、様々な仕事の動作を楽しく踊ることは、子どもたちの健やかな世界への好奇心を引き出します。
七夕の物語などの季節行事やメルヘンがライゲンの題材になることもありますが、その時も人の働く姿、いろいろな仕事をする様子を取り入れることを大事にします。
お百姓さんがタネをまく、畑を耕す、草を刈る、稲刈りをする、といったことや漁師さんが魚を釣る、綱を引く、船をこぐ、などといった動きです。
靴屋さん、竹細工やさん、鍛冶屋さん職人さんの働きぶりも、とても興味深いものですし、アイロンをかける、洗濯をする、お掃除をする、料理をするなどといった家事もまた、題材として豊かに取り上げられるものです。
こうしたライゲンは子どもたちの体に染み込んで、遊びもまた豊かになっていきます。幼児の遊びの基本は「模倣〜まねっこ」ですが、現代生活においては、大人が体を動かして真剣に働く姿を見る姿がめっきり減ってしまいました。ごっこ遊びの種となるお手本を見る機会が減ってしまった中で、ライゲンはそれを補う力も持っているのです。
次回はこの幼児の模倣の力について、書きたいと思います。
(園長 虹乃美稀子)