ある日の保育後の夕方に、園の電話が鳴りました。
近所に住んでいる見知らぬ方からでした。
以前から私の園にご関心があり、本も愛読しているから急で申し訳ないけれども、良ければ持参した本にサインだけでもお願いできないかとのことでした。
保育後の時間は、いつもやることが山積みです。特にこの日は、あと40分ほどでバスに乗って出かける予定があり、時計と睨めっこしながら仕事を進めていたところでした。
でも、もうそのお電話の主は園の前にいらっしゃると言います。
お断りするのも申し訳ないので、それでは本当にサインだけになってしまいますが、、、と言いながら扉を開けてみると、そこにいらしたのは私と同年代の娘さんとそのお母さんでした。
ご挨拶もそこそこに、ご持参された拙著「小さなおうちの12ヶ月」と「一番大事な子育ての順番」にサインしながら(2冊ともご愛読いただいて嬉しい限り)、時間がないので早口になりがちな自己紹介を伺いました。
そのお母さんは、長くご近所で家庭保育室をされていた保育の先輩でした。
(私の本は保育者の先輩方に熱く支持されていることが多く、励みになっています)
お連れの娘さん以外にも3人の娘さんと息子さんがおり、なんと「小さなおうちの12ヶ月」の中の私の子ども時代の写真に、そのご姉妹が写っているというのです。
持参された本のそのページを開きながら「これが私で、これが妹です」と親子でご説明くださるお二人。
なんでも、写真の中のその子はそのおお母さんが買ってあげたという服を着て、切ってあげたというおかっぱ髪も、覚えていて間違いないとおっしゃいます。
町内会旅行の写真でしたので、どうして違う地域に住まわれていたご家族が、一緒に私たちの町内会旅行に同行されたのかは、もう40年以上昔の話なのでお母様もお忘れになっているとのことでしたが、とにかくそんな奇遇もあるのだなあと思っていました。
あ、バスの時間が!
最後に「ところで先生はこれですか?」と写真の中で指さされたのは私の妹。
「いえいえ、私はこれです。」と指さしたら、お二人とも「え!?」
その娘さんは聞けば私と全く同い年。
だけれど写真の中の私とその娘さんは、明らかに5歳以上離れているように見えます。
私は一瞬、狐につままれた心地になりました。
私だと思っていた私は、私ではないのだろうか。。。
いやいや、そんなことはありません。
これは間違いなく私です。
しかし、突然訪れた親子さんの確信に満ちたお申し出に、とても不思議な気持ちになった夏の夕方でした。
後日、母に確認も含めてこんなことがあったのよと話をすると、母はすっかりその町内会旅行の細々としたことは覚えていませんでしたが、その親子さんの苗字を伝えると、遠い遠い記憶のどこかになんとなく覚えがあるような気もすると話していました。

写真に写った私は間違いなく私なので、お顔の似ている妹さんなのかもしれないね、というところで落ち着きました。
とはいえ、やはりご縁があってこそのご訪問だったと思います。
その娘さんも今は遠くにお住まいで、たまたま仙台にいらしていたので、急のご訪問となったようです。
長年園を続けていると、時々こんな不思議なご縁がやってくることがあります。
ついこの前も、また別の話がありました。
最近、こうした驚く不思議なご縁の話が増えているような気もします。
虹のこども園も今年で19歳。7年周期でいう「成人」まであと2年ほど。
虹のこども園らしい「自我」が「成人」していく時期に入り、個性がはっきりしてきたことによって、ご縁もまたはっきりと水面上に浮かんでくるのでしょうか。
そんな気持ちでおります。
限られた人生の中でいただくご縁を、大事にていきたいと改めて思う夏です。

(文・虹乃美稀子)
次回は7月14日新月🌑の更新です。




