好評により再配信中!虹乃美稀子トークライブ「子育てはアート」

小さな声が聞こえるところ61「コクーン・タイム」

年が明けました。
今年はコロナが流行り、雪は降り積もり、寒さは極まり、
巣ごもりするしかないようなお正月でしたね。

遠くに住む家族と会えなかったり、
気の合う仲間や友達と気軽に集えなかったり、
恒例のお楽しみや行事が見送られたりと、
残念なことも一年近く続いてくると、ちょっと心が荒れがちになりそう。

今カサカサになっているのは手足や唇だけではないのかもしれません。
小さな「我慢」を重ねたり「やりたいことを押さえたり」している私たちの心もまた然り。
潤いは身体にも心にも、とても大切なものですね。
自分の中の「小さな声」に耳を澄ましてみると、
普段の日常の中では忙しく流してきた、自分の心の中の声が聞こえてくるかもしれません。

ー日の出を見たい。降り積もった雪の中に、飛び込みたい。ずっと本を読んでいたい。海を見ながらコーヒーを飲みたい。ギターを弾きたい。子どもと遊びたい。靴下を繕いたい。車を磨きたい。カレーを作りたい。寝ていたい。ー

自分の中のそんな小さな声を、自分が一番聞こえないふりをしているのかもしれません。

私は、昨春からのこの世界的な巣ごもりの時間を
「コクーン・タイム」と呼んでいます。

「コクーン」とは「蛹」という意味です。

幼虫から成虫になる変容(変態)の中で、あの繭の中に閉じこもる時間があるように、
私たちもまた、この蛹の中にいるような時間の中で、
普段聞き流していた自分の中の小さな声に耳を澄ます大切な機会とすることができるのではないでしょうか。

私はそんなコクーン・タイムの中で、日常を繰り返すための忙しさから拾わずにいた自分の声のいくつかを実践することができました。
その一つは、クロスカントリースキーを手に入れたことです!

青森で過ごした小学生時代、冬の体育はノルディックスキーと呼ばれたいわゆる「歩くスキー」でした。
学校の前に果てしなく広がる雪の積もった田んぼを、マラソンのように何周も何周もスキーで走るのです。

私は子どもの頃から体育の授業を楽しいと思った経験はあまりないのですが、
このスキーの時間は嫌いではありませんでした。
「前習え」も「行進、進め!」もなく、一面白銀の世界の中、田んぼの向こうに見える白く雪化粧した八甲田山を眺め、ただただ白い息と汗を吐き出してスキーを黙々と滑らせる時間。

若い頃には雪坂を滑り降りるアルペンスキーも遊び程度にやりましたが、
就職すると次第にスキー場からも足が遠のき20年以上が経ちました。

しかしここ数年、実は冬になると雪山に行ってみたいと心惹かれるようになっていました。
そしてもう一度スキーをやるなら、リフトに乗って滑り降りるのではなく、あの白銀世界の中の冬木立を眺めつつ自分のペースで歩くことができるクロスカントリーをしてみたくなったのです。

大人になって新しい遊びを始めるには、波に乗る勢いが必要です。
その波がこの年明けに突然やってきました。
(チャンスという波は、本当に突然、思いも掛けないところで、不意にやってくるものです。)
私は、迷わずその波に乗りました。
翌日には、まさかの日本三大豪雪地帯尾花沢市の「富士スポーツ」というその筋の名店に連れて行ってもらい、歩くスキーのスタート4点セットを特売価格で入手し、我慢できずに帰り道の小さなスキー場で、値札をつけたままスカート姿で滑っていました。(ほんの少しの時間ですが!)

私は、コクーン・タイムの中で、自分の声に耳を澄ましてみる時間が増えてよかったと思いました。
きっと、そうして自分の中の小さな声に耳を澄ましていたからこそ、
目の前に求める波がやってきたときに、迷わず乗ることができたのです。

「白銀の世界の中で遊びたい」という私の心は今その声を聞いてもらえて、
雪解けの水に洗われたように、潤っています。

蛹である時間は、いつか終わります。
コクーンを破り捨てるとき、私たちはどんな風に変容しているのでしょうか。
そんな想像が楽しめる2021年でありたいと、思います。

(この連載は毎月満月・新月の更新です。次回は1/29満月の更新です。)

ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。

2008年「東仙台シュタイナー虹のこども園」を開園。幼稚園部を中心に、未就園児親子クラスから小学生クラスまで、12年間にわたる子どもの成長を見守る草の根の教育機関として運営。
東京をはじめ、全国各地でシュタイナー講座・子育て講座を開催。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)