新刊『いちばん大事な「子育て」の順番』発刊のご案内

小さな声が聞こえるところ66「鳴子の森でメイプルシロップ採れました」

 小学生の頃、母が買ってくれた「大きな森の小さな家」(ローラ・インガルス・ワイルダー作)の世界に夢中になりました。かつてテレビで大ヒットした「大草原の小さな家」の原作シリーズの1冊目となる本です。
 開拓者たちの、暮らしのすべてをその両手から生み出していく生き様を子どもの視点から綴られた世界は、現代っ子の自分にはとても印象深く、その後にシュタイナー教育に共感する土台を育んでくれたかもしれません。
 
 その中に、ローラのおじいちゃんが住む森の奥で、かえで糖(メイプル・シュガー)を採取する話が出てきます。
「あたたかくなるとすぐ、じいちゃんは、カエデの林へいって、どの木にもドリルで穴をあけ、その穴に、といの丸い口のほうを差し込み、ヒマラヤスギのバケツを、といのすぐ下の地面においてきたんだ。
 樹液というのはね、木の血なんだ。根から上のほうへのぼってくるんだが、春になってあたたかい陽気になると、樹液は、どの枝にもずっと先のほそいところまで行って、緑の葉っぱをそだてるのさ。
 というわけで、カエデの樹液が、木にあけられた穴のところまでくると、そのまま小さなといを伝って下のバケツにながれこむんだ。」 ー大きな森の小さな家(福音館書店)

 こうして集められた樹液は、森の中で鉄の大鍋と薪で煮詰められ、当時貴重だった店売りの砂糖の代用品としてのメイプルシロップとなります。そして、親戚が集まってのパーティーで、雪の入ったお皿に熱々のシロップを垂らしては、冷え固めて飴状になったものをその時ばかりはいくらでも食べて楽しむのです。

 木からシロップが採れて、それを雪の上に落としてキャンディーにして際限なく食べられるなんて、まるでおとぎ話のよう。遠い外国の昔の話と知りながら胸をときめかせたものです。

そんな憧れのメイプルシロップが、まさか地元宮城県でも取れるなんて。
ご縁あって知り合った鳴子温泉もりたびの会の齋藤理さんにガイドしていただき、3月のある日曜日、鳴子温泉郷にある「エコラの森」でのカエデ樹液の採取体験をさせてもらいました。

園の親子クラスに鳴子から長く通い、今はもう10歳になるFくんとそのお母さん、Fくんの親友も一緒です。

実はカエデの樹液は濃淡はあるもののおよそどの種も甘さを帯びており、日本ではイタヤカエデから採取することが多いそうです。
早春の森はまだ雪がたくさん残っていますが、カエルの卵がたくさん見つけられ、春の気配はあちこちに。

 雪解け水で川が大きくなっていて、木材を渡し橋にしてカエデの林まで向かいました。
結構本気度を上げないと落ちてしまいそうな即席の橋です。
 
 イタヤカエデはこの季節に、太い幹に小さな穴をあけられて、少しずつ樹液が集められていました。まるでローラの本に書いてあった通りで感動しました。
樹液は木の血液、という言葉が思い出されます。
木にとっても大事な血液を、少し分けていただく、という気持ちです。
 帰り道は、あんまりうれしくて、森が美してく、ボーッとしてしまい、雪解けの川に落ちて腰まで水に浸かるという失態。子どもたちが呆然と見ていました、、、。びしょびしょの記念写真! すごく冷たいけれど、なぜか清められたような爽快感。(笑)
 
 
 分けていただいた樹液は、園に持ち帰って見よう見まねで煮詰めてみました。
300CCほどあった無色透明の樹液は、煮詰めて煮詰めてうっすらと琥珀色を帯びてきたところで火を止めました。なんとたったの20CCほどでしょうか、、、。
サラサラしていてシロップと呼ぶほどの粘性はありませんが、しっかり甘さを味わえました。 幼稚園部では、火曜日のおやつのハトムギ団子に、いつもメイプルシロップをかけていただいているのですが、こうやって樹液から煮詰めてみるとそれがどんなに貴重なものであるかがわかります。そして木の大事な血液を濃くしていただいているんだという実感が湧いてきます。

 

  相変わらずコロナウイルスが元気で、仙台も緊急事態宣言が続いていますが、今年1年遠出を控えざるを得なかったために、結果的に地元の歴史や自然と新たに出会い直す機会が増えています。

遠い外国のおとぎ話のように思っていたメイプルシロップ作りもそのひとつ。
まだまだ私の知らない出会いが、近くの里山で待っていてくれるのかと思うと、とてもワクワクした気持ちになっています。

 
(この連載は毎月満月・新月の更新です。次回は4/12新月の更新です。)

ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。

2008年「東仙台シュタイナー虹のこども園」を開園。幼稚園部を中心に、未就園児親子クラスから小学生クラスまで、12年間にわたる子どもの成長を見守る草の根の教育機関として運営。
東京をはじめ、全国各地でシュタイナー講座・子育て講座を開催。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)