小さな声が聞こえるところ82「エプロン愛」

先日、2歳児のプレ幼稚園クラスに来ている女の子が、ピンクのエプロンをつけてうれしそうにやってきました。

それを一目見て「私たちの格好を真似たのね」と思いました。

今年から通い始めたその子は、普段は保育園に通っています。
月に2回、お仕事をお休みしたお母さんとクラスに通うのを、それはそれは楽しみにしています。
この日は「虹のこども園に行くから、先生と同じ格好をする」と言って、張り切ってエプロンを身につけてきたそうです。
 
私は、エプロンが大好きです。
振り返れば、15歳で花屋のアルバイトを始めてから、保育の道を歩み始めてずっと、日々エプロンを身につけて暮らしていました。
私のエプロン道は、もう30年を優に超えます。
 
 
エプロンは仕事着ですから、機能性が大事です。
今は主流となっているカフェエプロンのような首に紐を結びつけるタイプは、
首が凝ってとても長くはつけられません。
作りが簡単だからなのでしょうが、長時間の仕事には向きません。
子どもを抱いたら首を引っ張られますし、そうでなくても常に布の重さを首で支えることになります。
自然とエプロンの形は吟味するようになり、今ではそのエプロンが使いやすいものかどうかが一目でわかるようになりました。
 
エプロンは、美しさも大事です。
着衣の上に身に付けるものですから、一番目立ちます。
保育で身に付けるエプロンは、いつもアイロンを当てています。
染みができたら、すぐ取るように、と教えてくれたのは、私のシュタイナー 教員養成時代の恩師である森尾敦子先生です。
エプロン姿をずっと目にするのも、そこに抱かれるのも子どもたちです。
ヨレヨレで汚れていては、子どもたちに失礼です。

大人が家事をするときに、身につけているものが質素でも美しいというのは、質の高い喜びです。

保育所に勤めていた若い頃、市から貸与される保育用ジャージや、保育カタログにあるアップリケがいっぱいついているエプロンを身につけたくなくて、自分が子どもの前で納得して着られるエプロンを探し歩いたり、気に入った型を起こして布を選び、エプロンを作ったりしていました。
 
子どもにとって、そばにいる大人は一番大きな影響を与える「外的環境」でもあります。
大人の服装は、子どもの視覚、触覚に大きな影響を与えるのです。
 
そのために、私たちは保育の中で黒を身につけたり、全身真っ白になるようなコーディネートはしません。
周囲の環境を吸い込むように影響を受ける子どもたちにとって、黒や真っ白という無彩色は、強烈な印象を与えます。
育ち行く心身に強い刺激からの「覆い」を与えたいこの時期の子どもたちにとって、「色彩」はとりわけ子どもの内面に光と喜びをもたらします。
美しい色を身につけていることは、子どもの環境作りにとっても大事なのです。
 
子どもたちが抱きついてきたり、触ったりするものですから、
綿や麻といった自然素材100%のものであることも大切にしています。
地球に生まれ落ち、ここで生き抜くために、触覚を始め、すべての感覚器官が育つ人生の中で一番大事な時期ですから、その肌に触れるものはこの地球から生み出された自然の素材であることが大事です。触覚を通して、その本質に触れていくのです。

そういう意味で、子どもの前で身に付けるエプロンはとても大事な環境の一部になると思い、
いつしか園でオリジナルのエプロンも扱うようになりました。
これは、シュタイナー教員養成時代に実習課題として作成した、ドイツのシュタイナー園の教師が使っていた型を再現しています。
洋裁の先生が、型紙を見てその完成されたフォルムに驚いたという逸話のあるエプロンです。
(詳しくはこちらからご覧ください)

タッチパネルやスクロールで様々なことがこなせてしまう現代において、周りの大人が手足を使って働いている姿が日常にあることは子どもにとってとても大切です。
特に小さな子どもたちにとって、一番身近にある大人の働く姿は「家事」になります。
家事の作業着であり、そして日常着としての美を兼ね備えたエプロン。
これからも子どもたちの憧れとなるようなエプロンを、愛し続けていきたいと思います。

(この連載は毎月満月・新月の更新です。次回は12/4新月の更新です。)

ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。

2008年「東仙台シュタイナー虹のこども園」を開園。幼稚園部を中心に、未就園児親子クラスから小学生クラスまで、12年間にわたる子どもの成長を見守る草の根の教育機関として運営。
東京をはじめ、全国各地でシュタイナー講座・子育て講座を開催。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)