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小さな声が聞こえるところ90「虹のこども園の卒園式」

 先日、園から6羽のひな鳥が巣立っていきました。
男の子が4人、女の子が2人。
園では卒園式に代わる「卒園・修了のつどい」を在園児の保護者も含めたみんなで共にお祝いし、巣立ちを見送っています。

この日に必ず行うの人形劇は「ならなしとり」。
岩手に伝わる昔話で、三兄弟が病で伏せるお母さんのために、順に奥山の沼にならなしを取りに行くお話です。長男も次男も山に棲む老女(森の声を表しているとも言う)の導きを無視して、沼の主に食われてしまいますが、最後に向かった三男は老女の導きを固く守り、見事ならなしを得て、兄たちも助けて、母の元に帰ると言うあらすじ。
巣立ちの日にふさわしい、愛と勇気を奮い立たせるお話です。 

2月から毎週午後に延長保育をして作ってきた「坊主人形」と呼ばれる、羊毛に草木染めして周りを自分で縫いかがった布を被せた単純なお人形は、年長児にとって、男女関わらずとりわけ愛しい存在になっています。この日、この弟妹のように感じている坊ちゃんの「お名前」を壇上で発表します。
そして、坊ちゃんに話しかけるようにして「〇〇くんのように、いつも朗らかで大きな海のように思いやりの深い子になりますように」などと、子ども一人一人に坊ちゃんを通して言葉を贈ります。

 
そのあと在園児たちも、お名前を呼ばれて、壇上に上がります。
ここでは修了制作で取り組んだ木のこびとをもらいます。
一年前の春の入園の時には、モジモジとしていた年少さんも、堂々とうれしそうに壇上に上がってくる姿は、一年の成長をひしひしと感じられる時間です。 

保護者さんから歌の贈り物の時間もあります。
毎年、お母さん方を中心にして、歌の練習を重ねられ、当日は素朴で美しい歌声が子どもたちを包みます。
人間の歌声は、どんな人でも癒しの力を持っています。
とりわけ、愛する子どもたちの巣立ちを祝う親の歌声は尊く、いつも涙が自然とこぼれてきます。
子どもたちも歌声に包まれて、静かに耳を澄ませます。

 
最後は、卒園児・在園児すべてに思い出のアルバムを渡します。
子どもたちが毎週火曜日に園で描いてきたにじみ絵(水彩画)を台紙にして、教師が保育の合間にさりげなく撮ってきた写真が貼ってあります。
担任と子どもの手形も押してあります。
園創立当初に思い立って始めたこの手作りアルバムを作ることは、当時から比べて園児が倍以上に増えた今となっては、年度末の時期にとても大きな時間を費やす仕事になりましたが、デジタル写真ばかりとなってしまった現代であるからこそ、何度も子どもも自由に見返せるアルバムがあり、それが手作りであることは大きな意味あるように感じて、毎年作り続けています。
3年間、ここで暮らしを共にしてきた子どもたちの巣立ちは、教師にとっても成長の喜びを共に祝うとともに、さみしさも禁じ得ません。
でも、子どもたちにとっては、もう一つのおうちとして温かく過ごしたこの虹のこども園から勇気を持って巣立っていく大事な節目です。 

大人はセンチメンタルにならずに、次の世界への期待と喜びをしっかり受け止め、この世界は何があっても大丈夫、信頼に足るものだよと言うことを伝えていってあげたいと思っています。

新しい世界に一歩踏み出すすべての子どもたち、おめでとう!
この世界がいつも、あなたたちの信頼に足るものであり、それに応えてくれる世の中でありますように。

その世界に責任を担う大人のひとりとして、今日も私は健やかにあれますように。
 
(この連載は毎月満月・新月の更新です。次回は4/1新月の更新です。)

ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ。
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事。

2008年「東仙台シュタイナー虹のこども園」を開園。幼稚園部を中心に、未就園児親子クラスから小学生クラスまで、12年間にわたる子どもの成長を見守る草の根の教育機関として運営。
東京をはじめ、全国各地でシュタイナー講座・子育て講座を開催。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)