小さな声が聞こえるところ93「おひさまの力を充電しよう」

春休みは、念願の独立型の太陽光発電システムをお庭のはなれに設置しました。
昨年の春にはなれを作ってから、1年越しの計画がやっと実現したのです。

今回はいつもお世話になっている大工さんとともに、旧知である釜石市でエコハウスを運営している山田周生さんにもお手伝いいただきました。
周生さんはもともと25歳の時にバイクでサハラ砂漠を単独縦断して以降、カメラマンとして主に秘境を舞台に行われる冒険やサバイバルレース、アウトドアスポーツ、地球環境、先住民などを撮影取材されてきた方で、地球約75周分もをバイクや車で走っています。

世界で最も過酷と言われるパリ・ダカールラリーを2輪と4輪で完走し、日本にパリダカを紹介する草分けのカメラマンとして、日本のメディアに紹介されたほとんどの写真を撮影しました。

その旅で、地球のいたるところで砂漠化や汚染など環境の急激な変化を目の当たりにしたことをきっかけに、化石燃料を一切使わず二酸化炭素を出さないバイオディーゼルカーを製作し、地球一周してきた後で旅先の岩手で偶然に東日本大震災にあい、そのまま釜石で支援活動をされてきた方です。
世界中を飛び回っていた周生さんが、こうして東北に落ち着いてくださった縁とともに、今回虹のこども園に太陽光発電システムを取り付けてくださいました。

大工の山田さんが、インバーターやコントローラーといった機器が、子どもたちの場所に馴染むよう、ガラス扉を取り付けてくれたり、バッテリーボックスの扉を黒板にしてくれたりと色々工夫をしてくれました。
はなれの屋根に上げた太陽光パネルは、もともと幅を計算して作った屋根のようにぴったり外観に収まりました。

新年度が始まり、子どもたちはお庭のはなれが進化しているのに目を見張っていました。
とりわけこういった機械に目を奪われる子もいます。

これなあに?と尋ねる子どもたちに「おひさまの力を電気に変える機械だよ」と話すと、すぐに納得して、私たちが掃除機や携帯バッテリーに充電しているのを見て、「おひさまの電気たまった?たまった?」と嬉しそうに聞いてきます。
電気は増減のあるエネルギーであることを、実感できているようです。


何より、大人である私たちが、「今日は使いすぎて減らしたな」とか、「雨だから溜まりがゆっくりだな」とか、実感できるようになりました。
独立型の太陽光発電というのは、いわゆる電力会社の売電システムを利用しない、自己発電自己使用に完結するオフグリッドな極めてシンプルなシステムです。
容量はまだ小さいですが、秋冬にはなれで子どもたちが遊ぶ時の暖房用をまかないたいのと、それから最近また大きめの地震が増えてくる中で、災害時の自家発電ということを考えて、なるたけ早く設置したいと考えていました。
バッテリーをこれから増やしていくことになって、容量を増やすことも可能です。

今は携帯用のバッテリーもとても進化しているので、システムに慣れてきたら、保護者の皆さんともこのおひさまの電力をシェアしていきたいです。

♪ おひさま照れ 私の心に この地上で よく働けるよう

子どもたちと、毎日ライゲンの時間に踊りながら歌う一節。
おひさまの力を電気に変えられるようになり、また新しく心と体に響いてきます。
そして新緑の美しい季節、私たちもおひさまの光をいっぱい浴びて、心も体も充電していきたいですね。

 
(この連載は毎月満月・新月の更新です。次回は5/16満月の更新です。)

ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
園長および幼稚園部担任他。
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、2000年に音楽発信ホーム「仙台ゆんた」を開き、アンプラグドのライブ企画など行う。
並行してシュタイナー幼児教育者養成コースに学び、南沢シュタイナー子ども園(東京都東久留米市)にて吉良創氏に師事。
08年仙台ゆんたに「虹のこども園」を開く。
民俗学とロックとにんじんを好む。1973年生まれ、射手座。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)