小さな声が聞こえるところ18「空の上から待ち合わせ」

新年度が始まりました。
今年の新入園児は6名です。
少しの不安と大きな期待とを胸に、ドキドキしながらやってくる新しい小さな子どもたちを、教師とともに気遣いつつ、さりげなく仕度を手伝ったり、声をかけたりしながら迎えている進級児たち。愛しい光景です。

入園のつどいのあった週は、新入園児たちは午前保育の早帰りでした。
小さな子どもたちが降園すると、それまで若干気配りしていた緊張が解けるのか、3月までの馴染んだ教室の空気に変わります。
そうして「おあつまり」の時間に丸くなって座ると、年長の女の子が不意に「どこの幼稚園にしようかってずっと迷って、いろんなところ見に行ったけど、ここにして本当によかったあ。」とはっきりとした声で言うのでびっくりしました。

びっくりしたと言うのは、その子は昨年春に年中で入園した子なのですが、少し引っ込み思案と言うか、みんなの前で自分の思っていることをはっきり話すと言うことはあまりなかったので、まずその成長に驚いたのです。
話していることそのものは、その子のお母さんがそのように度々お話してくださるので、その台詞を自然と覚えて真似たものなのでしょう。でも、そんなお母さんの台詞が飛び出てくるくらい、憧れの年長児になり、幼稚園がますます楽しく、ワクワクしている気持ちが、その子自身の変化となって輝いているのが保育の中でもありありと伝わってきていました。

そしてそれを聞いた進級児たちが、一応に「わたしも」「ぼくも」「ここでよかった」と口々に言い始めました。
一瞬にして感動に飲まれそうになる担任ですが、その喜びは腹に落としてー。笑
静かに、先生らしく、話しました。

「それはそうよ。だって、みんな生まれる前のお空にいた時に、みんなであそこの幼稚園で一緒に遊ぼうね、って約束してきたんだもの。先生も、みんなの幼稚園の先生になりたくてやってきたんだもの。みんなで待ち合わせして、よかったね。」

「そっかー」「よかった〜」「へー、そうなんだー」
どこか遠いところを眺めるような、満足気な表情の子どもたち。
幼児期にはファンタジーの力を育てることが大切で、それが一生を生き抜く力の源になると言われますが、まさにこうした何気ない教室での会話のやり取りにクリエイティビティを添えることは、私たちが大事にしていることのひとつです。

今年の春は、穏やかな静けさとともに始まりました。
秋に植えた種や球根は、気づけば庭を賑やかにしています。
私たちもまた、見えない種や球根のようなものかもしれません。
生きるということの本質には、何か意識と無意識の境界を超えた「意図」というものの存在が、見え隠れしているからです。
人生は、不思議です。
不思議さを面白がれる力は、きっと生き抜く力でもあるのでしょう。
幼い頃にしか培えないものがあり、それは時代を問わず人間である限り不変です。

(この連載は、毎月新月・満月に更新されます。次回は5/5新月の更新です。)

文・虹乃 美稀子(園長/担任)

仙台市の保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、シュタイナー幼児教育者養成コースに学ぶ
南沢シュタイナー子ども園にて吉良創氏に師事

06年 園の前身となるシュタイナー親子クラス開設
08年 「東仙台シュタイナー虹のこども園」開園 
仙台、東京、岩手にてシュタイナー講座を通年開催 

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