巣立ちの春。
専科小学生ミカエルクラスでは、2人の子どもの卒業のお祝いがありました。
出会ったのは、1歳の親子クラスの時から。
お母さん方がフルタイムでお仕事をされていたので、幼稚園部ではなく親子クラスに通い続け、そのまま小学生クラスに通っての通算12年のお付き合いでした。
毎年春の最後の回には、一年の思い出を綴った作文集を作り、親御さんを招いて発表します。ここ3年ほどコロナ下で自粛していた親御さんもご一緒の持ち寄り食事会も再開して、みんなで久しぶりにワイワイとお祝いする貴重な時間でした。
(ビーガン料理家のお母さんからは、こんなロースイーツの差し入れまでいただきました。)
昨春に、このクラスの担任は私からA先生に変わりました。
長く担当したクラスを引き継ぐのは、バトンを受け取る方も大きなプレッシャーがあったかと思います。
このクラスは、毎回のアート活動やシュタイナー教育ならではの季節の祝祭を大切にした活動をしており、活動内容は盛りだくさん。
その上、毎回「ゆんた食堂」という夕飯の給食時間もあるクラスなのです。
毎回のクラス準備だけでも、なかなかボリュームが大きいクラス、しかし前向きに引き受けてくれた彼女に、とても感謝しています。
そのA先生の修了の集いの最後の挨拶は、私の胸にも深く沁みるものでした。
「動きは、翼になる」
卒業生は、最後の一年、進級の子は昨年度との違い、私が担当に入ったことに、戸惑いや色々な気持ちになったかもしれません。
色々な気持ちを感じるのは、素晴らしいことだと思います。
それがどんな感情でもです。
心臓が鼓動するように、心も鼓動している。
早くなったり、遅くなったり。
ミカエルクラスの時間は、みんなにとってどんな時間でしたか。
先生は、この前、研修会である言葉を教えてもらいました。
動きは喜びから生まれる
ということです。
喜びがないと、身体はとたんに重くなりますね。
やりたくて挑戦していること、苦手だけど少しやってみようと取り組むことは、自分から生まれる動きです。
先生は、みんなが今に最善を尽くしたのなら、指の先に、腕に、ひとりひとり違う羽根が生えるそんなイメージが、あります。
何かに立ち向かわなくてはならないとき、もし心が折れそうになったら、いつでもここの扉を叩いてください。
一緒に佳いアイデアを考えましょう。
みんながみんならしく成長していく道のりを心から応援し、祝福しています。
寄り道をしながらでも、歩みはとめずに
勇気を出して進んでいきましょう、お互いに。
この「動きは喜びから生まれる」という言葉は、先の日本シュタイナー幼児教育協会の定例研修会で、オイリュトミーの先生から聞いた言葉だと話していました。
彼女はその言葉をとても大切に受け取って、早速日々の保育や、ご自身の生活の中で味わいながら実践に反映しようとしていました。
そして、その言葉を消化し「翼」というイメージと共に、巣立ちゆく小学生たちに言葉の贈り物として伝えていること、これはシュタイナー教育の中で本当に大事にしていることの芯のようなものだなと聞きながら感じていました。
シュタイナーは「全ての教育は大人にとっての自己教育である」と話しています。
つまり、子どもに直接働きかけられることなど本当はとても小さなものでしかなく、
そこに対峙する大人自身が、自らの歩みを止めずに成長し続けようとするあり様そのものが、
一番人間にとって教育的な影響を与え続けるのだということです。
ところがここが一番難しいところで、高尚なことや、理想像を語ったり表現したりすることが自己教育であると、つい大人は勘違いしやすいものです。
A先生の人柄と日々の地道な子ども一人ひとりとの向かい合い方を長年見ているだけに、「一緒に佳いアイデアを考えよう」と言ってくれる先生の「一緒に」の言葉の温かみと熱が伝わってきて、私も子どもだったらA先生のような先生に出会いたいなと感じました。
このクラスは、学校に行っている子もいない子も、街に住んでいる子も田舎に住んでいる子も、そして1年生から6年生まで、さまざまな環境や違いを超えて、きょうだいのように関わり合って一緒に過ごすクラスです。
習い事でもない、塾でもない、学童保育でもない、どこにもない世界でここだけのミカエルクラス。
その扉は、どんな子どもにも開け放たれています。
一緒に、進んでいきましょう。
そう言ってくれる大人たちと仲間達と共に。
(園長 虹乃美稀子)
次回は4月6日満月の更新です。
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