小さな声が聞こえるところ117「バイオダイナミック農法に触れる」

 

春休みに、下北沢のmahinaphahrmacyさんで、バイオダイナミック農業者であるハイランドレメディーズの竹脇献さんとの対談ワークショップがありました。

イギリスのいちばん大きなシュタイナーコミュニティ、マイケルフォールは私も視察に行ったことがありますが、そこのバイオダイナミック農園で8年従事されてきた竹脇さんは、現在長野の上田市菅平高原でおひとりですべての作物を造られながら、カレンドゥラとアルニカを中心としたレメディーを作られています。

 バイオダイナミック農法(BD農法)とは、ルドルフ・シュタイナーの思想に基づいて実践される農法です。よく知られているのは、ヴェレダ社のコスメ類などでしょうか。ショッピングモールにも並んでいますので、皆さん目にしたことがあるかと思いますが、その原材料に用いられている薬草類はBD農法で作られています。
また、近頃ではワイン・ブームの中でひときわ上質のワインとしてBD農場で作られたワインが、ワイン通の方々の間でも知られているようです。
 
 世間的には自然農法や有機農業の一種と括られることもあるBD農法ですが、調剤方法などが独特なために、「魔術的」だと誤解されることもあるようです。
確かに「タンポポの花を牛の腸間膜で包んだものを越冬させる」「牛や馬の頭蓋骨にオークの樹皮を砕いて詰める」といった調剤方法は、どこか古臭い因習を想起させるかもしれません。
私もシュタイナー教育を学び始めた時にこうした情報に触れた時には、なんだかあまり親しみは持てない心地がして、距離を置いて見ていたことも確かです。

 

しかし、だんだんとこうしたことはシュタイナーが若い頃からゲーテの研究者の第一人者としてゲーテの植物観察法などを徹底的に深めていく中で、「植物の生長には宇宙全体が関係を持っている」ことを導き出した過程の中で生まれてきたものであると理解するようになりました。

竹脇さんも今回の対談の中で、BD農法の特徴として、

①6種の独自の調剤を用いること
②天体の位置を基軸とした農事暦を用いること
③植物の観察法を行うこと
の3点を挙げられていました。
 
 この調剤というのが一般には入手しにくく取り組みにくいので、自分でBD農法に挑戦しようとされる方はとても少ないのだと思いますが、園庭の小さな畑について、BD農法に近づくための最初の取り掛かりはどうすれば良いでしょうかという私の問いに対して、「まずは”種まきカレンダー”を入手して、それに従って種まきしてみたら良いのでは」とお答えいただき、なんだか肩の力が抜けました。
早速、阿蘇で長らくBD農法を実践されているぽっこわぱ耕文舎さんから毎年発行されている「種まきカレンダー2023」を求めました。

このカレンダーには、BD農法の基本的な理解についても書いてありますのでおすすめです。

春、種まきの季節。
園で毎年種を繋いでいるホピコーンや麦、豆などをこの暦に従って蒔いてみることにします。
また、生ごみをせっせと堆肥化しているうちに増えて困ってしまった線虫の駆除には、カレンドゥラが良いと聞き、今年は畑の大部分はカレンドゥラを蒔いて野菜作りはお休みしようかとも考えています。

竹脇さんがおっしゃっていたBD農法を実践される中で「効率を考えると、悪くなる」という言葉が、心に残っています。今は「コスパ(コスト・パフォーマンス)」とか「タイパ(タイム・パフォーマンス)」といった言葉がもてはやされ、何かと「効率」の問われる世の中ですが、生き物は本来、植物も動物も人間も、そうした「効率」とはいわば対極にある存在のように思います。長年保育の中で、子育てに「効率」を用いることはあり得ないと実感として感じるのですが、農業でも本質的には同じなのだと感じました。

できることから、少しずつ。

今年も足元から一歩ずつ、小さな歩みを進めていこうと思います。
この春の季節に、良い機会をいただいて心より感謝しています。
 

(園長 虹乃美稀子)

次回は5月6日満月の更新です。

 

山上亮×虹乃美稀子 「人育ての思想〜困難な時代を生き抜くために大切なこと」

詳細とお申し込みはこちらから https://peatix.com/event/3513220

ABOUT

虹乃美稀子東仙台シュタイナー虹のこども園 園長
園長および幼稚園部担任他。
公立保育士として7年間保育所や児童相談所に勤務後、2000年に音楽発信ホーム「仙台ゆんた」を開き、アンプラグドのライブ企画など行う。
並行してシュタイナー幼児教育者養成コースに学び、南沢シュタイナー子ども園(東京都東久留米市)にて吉良創氏に師事。
08年仙台ゆんたに「虹のこども園」を開く。
民俗学とロックとにんじんを好む。1973年生まれ、射手座。

著書
『小さなおうちの12ヶ月』(河北新報出版センター)
『いちばん大事な「子育て」の順番』(青春出版社)